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8秒×5セット「ゆるジャンプ」が血管力をきたえる

「ゆるジャンプ」のやり方は次のとおりです。

 (1)両手足の力を抜き、背筋をまっすぐに伸ばして立つ。両足は肩幅程度に開き、膝は少し緩めるイメージ

 (2)目線はまっすぐ前を向く

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 (3)足が床から少し離れる程度に跳ぶ。呼吸は自然に行い、止めないようにする。着地する時は、膝を軽く曲げる

 最初は1秒間に2回を目安に8秒間跳んでみましょう。慣れてきたらこれを5セット行います。

 可能な人は、おおむね1分間で100回跳ぶようにします。

 私はこの「ゆるジャンプ」を2018年に考案し、自分でも日課にしました。最初は10回でも息が上がっていましたが、しばらく続けていると、ヴァン・ヘイレンの『Jump』という曲をBGMにして、リズミカルに100回跳べるようになりました。これを出勤前の自宅や職場で、1日数回行います。

 すると、2カ月後には体重が2キロ減り、ウエストが引き締まって、周囲から「痩せたね」と声をかけられることが増えたのです。

 ちなみにバラエティ番組で、落語家の林家たい平さんに1日3回実践していただいた際も、1週間で腹囲が5センチ減っていました。跳ぶ時には腹筋にも力が入るためです。

 私は「痩せたね」と言われることでモチベーションが上がり、食事にもそれまで以上に気をつけるようになりました。その結果、1年後には体重が10キロ減っていたのです。さらに、平常時の最大血圧も、105程度から130程度まで下がりました。

 実は「ゆるジャンプ」は、血管力向上に効果的な要素がいくつも含まれているトレーニングです。

 ジャンプを繰り返すと、筋肉の収縮とともに動脈に刺激が伝わり、一酸化窒素(NO)が産生されます。NOは大動脈のくだりでお話ししたように血管拡張物質で、血流をよくします。毛細血管にも酸素や栄養が運ばれるようになりますし、高血圧の場合は血圧を下げてくれるのです。

 ウォーキングのような有酸素運動にも同様の効果がありますが、「ゆるジャンプ」はとりわけ“第二の心臓”とも呼ばれるふくらはぎの筋肉を強く収縮させるという点でも効果的です。ふくらはぎの筋肉が収縮すると、中を通っている血管が圧迫されて、心臓へと戻る静脈血がまるで牛の乳搾りのように押し上げられます。そのことでも全身の血液循環がよくなり、血圧が安定します。

「ゆるジャンプ」は“第二の心臓”とも呼ばれるふくらはぎを強く収縮させる ©mapo/イメージマート

 さらに、「ゆるジャンプ」は有酸素運動でありながら、下半身の筋肉に負荷をかける筋トレとしての要素があります。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンスの研究によると、有酸素運動と筋力運動のどちらかを単独で行うより、両方のタイプを組み合わせて行うほうが、最大血圧の降圧効果が大きくなるといいます。ゆるジャンプはまさに両者を組み合わせた運動なのです。

 以上の理由から私は「ゆるジャンプ」を血管力向上に理想的な運動として提唱したのですが、昨年、さらにその有効性を裏付けるような論文が発表されました。

 国立障害者リハビリテーションセンターや国立循環器病研究センター、東京大学などの研究グループが、「頭の上下動による脳への物理的刺激」が高血圧改善をもたらすことを世界で初めて明らかにしたのです。

 この研究では、軽いジョギングや速歩きをすると足の着地時に頭部へ約1Gの衝撃が上下方向に加わることから、同じ衝撃が加わるように上下動する椅子を高血圧の成人に用いて検証しています。その結果、1秒間に2回程度の頭の上下動により血圧低下が確認されたのですが、「ゆるジャンプ」も頭に上下方向の衝撃が加わる運動ですから、やはり降圧効果が期待できると言えるでしょう。

(構成・秋山千佳)

本記事の全文は、「文藝春秋」2024年11月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されています(伊賀瀬道也「高血圧、糖尿病、認知症、腎臓病、心臓病を防ごう 血管のアンチエイジング」)。この記事で触れている主な内容は次のとおりです。

 

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