1981年(95分)/東映/3080円(税込)

 エミー賞受賞を祝し、しばらく真田広之のフィルモグラフィを追ってみたい。

 子役から始まった真田の俳優人生は、千葉真一が率いるジャパンアクションクラブ(JAC)での修行を経て、キャリアを重ねていく。そもそも精悍なルックスと類稀な運動神経の持ち主ではある。が、それに甘んじることなく、たゆまぬ厳しい鍛錬と謙虚な姿勢をもって、恵まれた素質に磨きをかけた。

 そうした最高の素材を映画界が放っておくはずもなく、東映は早くから真田を大々的に売り出した。『柳生一族の陰謀』『宇宙からのメッセージ』といった、千葉真一主演、深作欣二監督の大作映画で、次々と大役に抜擢されていく。

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 真田もまた期待に応えてチャンスをモノにし、次世代のアクションスターとして人気を博すことに。今回取り上げる主演作『吼えろ鉄拳』は、若い日の魅力あふれる一本だ。

 物語は、野心家の叔父(成田三樹夫)に生き別れの両親を殺された青年・譲次(真田)の復讐を軸に展開する。『トラック野郎』シリーズなどでお馴染みの鈴木則文監督が演出をしているだけに、決して暗い内容に陥ることはなく、カラッと陽気なタッチの作品になっている。そのため、真田の爽やかなカッコ良さを全編通して堪能できる。

 序盤から飛ばしまくる。

 広大な牧場を馬で駆け回る、颯爽としたカウボーイ姿の冒頭。タイトルバックで流れる、自身の歌う軽快な主題歌「青春の嵐(ハリケーン)」。プールでブッチャーや水着美女たちと戯れる際に見せる、飛び魚の如きアクロバティックな動き、はにかんだ笑顔。全てのカットが、老若男女の誰でも惚れ込んでしまいそうなチャーミングさにあふれ、真田のためのアイドル映画として、この上なく快調な出だしである。

 中盤以降は、真田のアクションの数々に圧倒される。刺客たちを相手にした際の、伸びやかな足技、巧みな棒術。ロープを使っての屋上からの垂直下降。岸壁からの完璧なフォームでのダイブ――。いずれも、ド迫力かつ美しい。

 圧巻は香港でのアクションだ。バスの車内から窓をつたって外に出て屋根によじ登り、屋根の上で格闘。しかもその間、バスはずっと走行している。これだけでも危険極まりないのだが、それで終わらないのが真田だ。さらに道に突き出た看板にとりつき、別のバスの屋根に飛び降りるのである。終盤には馬を駆りながら、並走する車の屋根に飛び移ってもいる。

 最後の決闘で見せる極限にまで引き締まった肉体美、そして驚愕のラストカットに至るまで、真田の超人ぶりに圧倒される作品である。