――確かにセットも衣装も映像も自主製作映画には見えませんでした。そんな裏話があったんですね。
安田 決め手になったのが進藤さんの「わしは今年で退職するから、今年中に撮らな手伝ってやれんで」という一言でした。どう考えてもお金は足りんし、セットを貸してもらえる7月までは2カ月しかない。でも「このワンチャンスしかない」と思い、「やります！」と勢いで答えました。あとは車を売って、補助金もなんとかもらえて、ギリギリでしたね。
「1作目の時は撮影の前日に脚本すらない状態でしたし」
――安田さんはずっとそんな感じで映画を作られてきたんですか？
安田 行き当たりばったりなのは昔からですね……（笑）。1作目の時は撮影の前日に脚本すらない状態でしたし。
――それはどういう状況なんでしょう。
安田 脚本家の方からクランクイン4日前にあがってきたものがイメージにあわなくて、全部自分で書き直すことにしたんです。もちろん脚本料はちゃんと払いました、打ち合わせができていなかったのは僕のせいですから。とはいえ間に合うわけがないんで、とりあえず初日に撮影する分の脚本を書いて、撮影が終わったら他のスタッフが寝てる間に朝方まで翌日の分を書いて、という自転車操業で。
――ストーリーが破綻してしまいそうですが。
安田 映画の終盤から撮っていったんですが、いざ撮ってみたら想像以上に盛り上がるシーンになって「そしたら前段階のエピソードがこんなにユルかったらあかんな。じゃあ……」みたいに書き直していって、結果的にメチャクチャ考えることになってしまって、かえってクオリティがあがる着地に（笑）。
――意外とプラスがあったのですね。困ったことはなかったんですか？
安田 それは当然あるんです（苦笑）。役者の人に台本を渡すのが当日だから「役作りできない」というクレームはままありました。あとは全部撮り終わって荒編集したら3時間の大長編になってしまって、シーン1つずつは面白いけど、全体のバランスが悪くて切るところがたくさんあった。
毎日1シーンずつ書いてたらそのシーンの中で起承転結つけてて、不要な部分がいっぱいあったんです。バサバサ切っていったらあっという間に50分カットできた。3時間版を見た人にも「どこ切ったかわからん」と言われて、よっぽどいらんとこばっかだったんでしょう（笑）。こんなことしていたらお金も手間もめちゃくちゃかかるというのが1作目の反省でした。
