中西怪奇菓子工房は、オンラインで人体を模したお菓子を販売している。店主のナカニシア由ミさんが2013年に立ち上げた。目玉、脳、指、耳、舌のお菓子は、SNSで「ホラーすぎる」と注目を集めている。ナカニシさんはなぜ奇妙なお菓子を作り始めたのか。フリーライターの川内イオさんが取材した――。
目玉商品になった「目玉」
ハロウィンを迎えるたびにさまざまなメディアに取り上げられ、売り上げが通常の3倍になるという中西怪奇菓子工房。ひとりで切り盛りするナカニシア由ミさんが生み出した「怪奇菓子」の目玉商品は、その名も「目玉ゼリー」。カルピス味の寒天で、ラズベリーピューレを注射器で注入する「充血あり」と、プレーンな「充血なし」の2タイプある。
工房のオンラインショップにはほかにも根元から断ち切られたような指クッキー、引きちぎられて出血している耳クッキー、白子に似た脳みそレアチーズケーキなどユニークなお菓子が並ぶ。見た目はグロくても食べたらしっかりおいしいこと、できるかぎり着色料を使わないことにこだわった怪奇菓子は、全国から注文が絶えない。
さらに、『東京喰種』シリーズや最近では北欧ホラー『胸騒ぎ』などメジャー系から単館系まで映画とのタイアップは数知れず、東京ジョイポリス、ハウステンボス、サンシャイン水族館、星野リゾートなど企業とのコラボ企画も多数あり、2013年に開業して以来、売り上げは右肩上がり。
「ずっと上り調子だったんで、これは目玉御殿が立つなって言うてたんですよ(笑)」。
ところが2020年春、新型コロナウイルスのパンデミックが直撃。怪奇菓子は誕生日などのパーティーでもニーズがあり、オンラインショップでは通年で売れていた。それがコロナ禍でステイホームになり、さらに映画や企業の「食」にまつわる企画も雲散霧消した結果、売り上げがいきなり半減した。
このタイミングで、ナカニシさんは大胆な手を打つ。それがコロナ前より売り上げを伸ばす一手になろうとは、本人も想像していなかった――。