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 もちろん、男女関係なくやればセクハラが免責されるというものではない。たとえば、男性の部長が、女性部下だけのお尻を触ればセクハラとなり、男女全員のお尻を触れば無罪放免になるということはなく、男女全員にやればOKということはあり得ない。

 したがって、社長がハグをする際に「男女区別なくやっているから性的意図はないよ」と言ったとしても、彼女たち女性従業員側から「嫌だ」という気持ちを持たれる限り、セクハラになると言っていいだろう。

 さて、こんな話を彼女たちはしていたのだが、実はこれも前座に過ぎなかった。

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 本当のブラック企業話はここからである。

0泊4日の新人研修

 その会社に対する残業代事件を訴訟で起こし、彼女たちと打ち合わせの際に話をするたびに、その会社のブラックぶりをきいていたのだが、次の話は私も身震いを覚えた。

 この会社では、新人研修を行っている。世間的には、会社が新人研修を行うのは別段珍しいわけでも何でもない。

 しかし、この会社の新人研修の日程は「0泊4日」だという。

「0泊4日って、どこか海外に弾丸ツアーでもするんですか?」と思わず訊きたくなるが、研修が行われるのは国内である。国内で0泊4日の意味は、「泊」がゼロということ、すなわち「寝ない」ということらしいのである。寝る予定が4日間の研修のスケジュールに組まれていないので「0泊4日」の研修なのだそうだ……。

「さすがに寝ないって、無理でしょ?」と私も思うのだが、実際に寝る時間はスケジュールにないらしい。ただ、食事の時間が確保されているので、その時間を睡眠に使うのだという。

 つまり、60分ある食事の時間を最初の5~10分くらいで済ませ、あとは寝るというのだ。

 そんな中でやっている研修の内容は、理念唱和である。これを暗記し、大きな声で叫ぶのだそうだ。しかも、グループ単位で競わせるらしく、1名が間違えると全員が連帯責任を負うという。時には内容が合っていても、声が小さいとやり直しになるとのことであった。

 もちろん、理念唱和以外にも研修はあり、社長の講話もある。しかし、0泊4日のため、ついウトウトする従業員がいるのだが、その従業員には、社長から容赦なくぶん殴られるという制裁がある。ある従業員は、社長から殴られ過ぎて顔の形が変わり「あんなやつ、いたっけ?」と話題になるほどだったという……。

 言うまでもなく、いかなる理由であろうとも殴るのは犯罪で、この場合、傷害罪になることは間違いない。

 しかし、この会社に言わせると、殴るのは愛情表現だという。残業代請求の相談に来た彼女らのうち1名が、社長が社員を殴ることについて「おかしい」と幹部に述べたことがあるという。その幹部は、「あれは愛情表現。父親が子どもを殴るのと一緒」と述べたという。……あまりにいろいろとおかしいので、言葉を継げず、脱力感だけが残る発言である。

 そもそも父親が子どもを殴るという前提がおかしいが、その幹部はまったくそのことに気づいていないのである。