コンプライアンス意識が広がりつつある日本社会にあってなお、いまだ「ブラック」な対応を続ける企業はなくならない。労働被害の撲滅に取り組む弁護士たちが対峙する、世にも恐ろしい現実とは……。
ここでは、ブラック企業被害対策弁護団の著書『ブラック企業戦記 トンデモ経営者・上司との争い方と解決法』(角川新書)の一部を抜粋(本記事執筆:星野圭)。令和の時代、にわかには信じられないブラック企業の恐ろしすぎる実情について紹介する。(全4回の3回目/続きを読む)
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ブラック企業の社長のタイプ
社長にはいろんなタイプの人がいる。これはごく当たり前のことで、社長という部分を何に置き換えても構わない。ところが、ブラック企業の社長となると、この当たり前のことが通用しなくなる。
ブラック企業相手の紛争に取り組んでいて感じることだが、ブラック企業の社長(店長等の事業所の責任者である場合もある)は、実はそれほどいろんなタイプがいない。
ブラック企業の社長のタイプは、生粋のブラックタイプ、万能ワンマンタイプ、無知タイプの3つしかいないと言っても過言ではない。
ブラック企業の事案に遭遇するたびに、どこかで聞いたことがあるような社長の言葉があり、どこかで見たことがあるような会社側の労働者への仕打ちがある。他の弁護士の担当事件でも、聞いたことがあるような話で、同じ会社? と思うことがよくあるほどである。
ブラック企業の世界では、法的には当たり前のことが通用しなくなる。あなたの会社では、当たり前のことがきちんと通用しているだろうか。
ブラック企業には関わらないのが一番。とはいえ、現実の世界はそう簡単ではない。ブラック企業と知って好き好んで入社するわけではなく、入社してみたらブラック企業だったというのが現実であり、一度入社すると様々な理由から辞めにくいというのもまた現実である。
現実は悩ましいものであるが、とはいえ本書『ブラック企業戦記』を通して「ブラック企業相手でも対策はある!」ということを、ぜひ知っておいてほしい。
まずは、無知タイプの事例を一つ。