多様な軸に目を向ける・単一の世界から飛び出す

 また、単一の評価軸に縛られるのではなく、人生、あるいは業界の中でも多様な軸が存在することに気付くことが大切です。

 私たちは現代社会の中で、単一的な評価に晒され、縛られがちです。例えば試験で良い点数を獲れたかどうか、受かったかどうかという成績と合否が人生やキャリアを長きにわたって左右する日本の「受験」文化。「○○偏差値」、「○○ランキング」という言葉が流布しているように、受験を通過してもなお、わかりやすい単一の軸で評価することに慣れてしまって、なかなか「自分なりの軸で自分を見つめる」機会がないのかもしれません。

 しかし、内的な評価を育むのに大切なのは、世界の多様さに触れ、評価軸というものは単一ではなく、複数の軸があるということを知るということ。そのための小さな体験の積み重ねなのです。では、単一の世界から飛び出すためにはどうしたらいいのでしょうか?

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 一つの評価軸、あるいは一つの世界から飛び出す、と考えると、少しハードルが高いように思えてしまうものですが、実は身近な場所に「仕事以外の世界」は存在します。

 ハードワークに身を投じる人にとって適切なワークライフバランスを見出すのは難しい課題かもしれません。だからこそ、意識的に仕事と私生活の間にバウンダリー(境界線)を確立することも重要です。もちろん、我を忘れて仕事に身を投じるようなワーク偏重にならざるを得ない時期も存在するものですが、その中でも少しでも隙間を見つけて休息を取ることの効果は絶大です。

 ちょっと屋外に出て、木々にとまっている鳥に目を向けてみること。近所を歩いて外気を吸ってみること。違う会社、あるいは違う業界の知人とテキストでもいいので、小さな会話をしてみること。ジムに行って、仕事では使わない筋肉を育ててみること、そこで関わる人に目を向けてみること。自分以外の人の挑戦を応援してみること。

 また、家族がいる人であれば、「家庭」自体も、仕事の外の世界の一つです。パートナーとの関係に支えられることに加えて、子どもを育てるというエンドレスなタスクの中からも、フレッシュな考えが生まれ、仕事と直結しなくともそれこそがかけがえのない財産となることもあるでしょう。近年は男性の起業家やCEOが育休を取るケースもメディアで報じられるようになりましたし、起業家にかかわらず、男性の育休取得率は伸びてきています。

男性の育児©Unsplash

 この点は日本も少しずつではありますが変わってきている証なのかもしれません。さらに、近年、若者の早期退職も増えていることが、メディアでは企業側の立場からネガティブに報道されることもありますが、若者が一つの組織の価値観に縛られなくてもいいと思えるような従来とは異なる環境が育っていることは、一概に否定するものでもありません。捉えようによっては内的評価を大事にする世の中になってきていることの表れでもあり、雇用の流動化をプラスに活かすことのできる人たちもいるはずです。