「バスで往復すれば東京には今夜中に帰れる農家が知り合いですので、そこに行って米を買いませんか」
石井さんは小平の申し出を信じて疑わず、ぜひ案内してほしいと応じた。2人してバスに乗り、同県上都賀郡の真名子停留所で下車。近道があるからと石井さんを真名子村の山林に連れ込む。が、少し歩いたところで彼女が怪しみ、引き返そうとした。
小平は後ろから飛びかかり、石井さんを投げ倒し顔を殴ってから強姦に及ぶ。途中で彼女が性的に反応してきたため、そのまま翌朝4時まで体を貪った後、首を絞めて殺害。現金70円と腕時計を奪い、遺体は近くの堀の中に投棄した(遺体は9月10日に発見)。
さらに「第3の被害者」が…
3週間後の7月12日、小平は妻子の疎開先に向かうため渋谷駅で切符を買う行列に並ぶ。そのすぐ後ろに事務員の中村光子さん(同22歳)が並んでいた。雑談を交わすうち劣情を催し、例によって、電車で1時間ほど行ったあたりに何でも買える農家があると誘う。買い出しの金がないという彼女に自分が立て替えてあげると小平。中村さんは恐縮しながらも、嬉しそうに申し出を受け入れた。ちなみに、前日の7月11日から日本は主食の配給が1割減らされ、1人1日2合1勺となっていた。国民の誰もが始終腹ペコだった。
渋谷から浅草に出て、東武線に乗り換え金ヶ崎駅で電車を降りる。そして、またも近道があるからと、前回の犯行現場にほど近い上都賀郡清洲村の山林に誘い込む。
とりあえず、正面から口説いてみた。当然のように拒絶されると態度を豹変させ、彼女の履いていたゴム長靴の先を右足で踏んで、右手で喉を突き、倒れかかったところを前から割り込んで関係を迫る。
悲鳴をあげながら体を揺する中村さんの尻の辺りを2、3回激しく殴る。ようやく大人しくなったところで性交。射精を終えたところで、なんと彼女が小刀を取り出した。小平は動揺しながらも必死に小刀をもぎ取り、彼女の巻いていた細紐を首に二重に巻き、馬乗りになって絞殺。遺体を近くの堀の中に捨てた後、現金40円と腕時計を奪い逃走した。後の証言によれば、逃げる途中、空に米軍のグラマン機が10機編成で飛んでいたそうだ。
第4の犯行はそれからわずか3日後の7月15日。今度は池袋駅で出会った出版社勤務の紺藤和子さん(同21歳)が犠牲となる。防空頭巾にモンペ姿、細面、きゃしゃな四肢。小平好みの女性で、彼女もまた切符を買う列に並んでいるところで、声をかけられた。