そして、その「誰か」とは、「自分を裁かない」安心できる相手や、「今後もずっとつながっていきたい」相手なのです。
渇望が出たときに報告できる関係を目指す
そもそも、患者さんと向き合う上で、「ご家族のゴール」はどこにあるのでしょうか。
その答えは、「渇望が出た、スリップをした」ときに、すぐに報告ができる関係です。
性依存症の盗撮にせよ痴漢にせよ、加害者の人生が狭まってしまう理由は、「スリップしたから」ではなく「ばれること」にともなう社会的な刑罰や信用の喪失です。
行為自体は決して許されるものではありませんが、ばれなければ、当事者にとってその段階はギリギリセーフの線上にいます。
「してしまった」そのタイミングで、家族なり主治医なりに相談することができたなら、スリップはそこで止まります。必ず本人も後悔をしているからです。
しかし、そこで誰にも言えなければ、極めて高い確率でばれるまで行為は継続されてしまいます。ギャンブルも同様です。「競馬で3万円スリップしてしまった」こと自体は問題かもしれません。しかし、この時点で家族に告白できなければ、「だから取り返さなければいけない」と否認が生まれ、必ず深追いします。依存症とは、「そういう病気」なのです。
相手の行動を否定するのではなく受容する
【患者】先生、すいません……。先週、競馬でスリップしてしまいました。
【医師】そうだったんですね。ちなみに「いくら」使ってしまったのですか?
【患者】1万5千円です。
【医師】なるほど。それで、今はどんなお気持ちなのですか?
【患者】すごくつらいし後悔しています。診てくださっている先生にも申し訳ないです。
【医師】私は大丈夫ですが、なぜマイルールを敷いている中で競馬ができたのでしょう?
【患者】それが、先日、会社から出張の交通費が精算されて、現金で受け取りました。
【医師】では、今後も同じような場面があると思うのですが、どうしましょうか?