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「2017年の国際将棋トーナメントにはコートジボアールから選手の参加がありました。またブラジルでは古くから日系人を中心に将棋が指されていますが、『ブラジル将棋連盟』があるサンパウロとはまったく別の地方に、少数で将棋を指すグループが生まれている。彼らはネット対局を楽しみ、ポルトガル語の将棋ミニコミ誌を発行したりしています」

 山田さんはインターネットの進展が、文化の普及、広報のあり方を大きく変えたと話す。

「将棋の海外への普及という点では、『81Dojo』の果たした役割が大きいと思います。多言語対応にしたことで、いろんな国の人同士が将棋を指すハードルを低くした。開発した川崎智秀さんは2008年からYouTubeに英語で将棋の動画サイト『How to play Shogi』を公開しています。ルールに始まり、定跡、将棋の歴史などまで紹介した。海外では将棋関係の本を入手するのも大変な中で、それまでになかった教材として画期的なことでした」

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  外国籍の女流棋士第一号となったカロリーナ・フォルタンさんが注目されたのも、「81Dojo」での対局がきっかけだった。2011年春頃、「『81Dojo』に強いポーランド人の女性がいる」と聞いた北尾まどか女流二段はその棋譜を目にする。「確かにアマ三段くらいの棋力はある」と思い、チャットで連絡を重ねた。そして、カロリーナさんの将棋への情熱に確かなものを感じた。

「将棋を指しに日本に来ない?」

 北尾女流二段の誘いに、カロリーナさんはその年の6月、20歳の誕生日直後に初めて日本を訪れる。1週間の滞在で、棋士や女流棋士との研究会、食事会に参加し、将棋駒の名産地・天童にも脚を運んだ。翌年にはリコー杯女流王座戦の招待選手として来日、高群佐知子女流三段に勝利する。この経験がカロリーナさんに女流棋士を目指すことを決心させた。

将棋の国際化への課題

 今回来日したフランス将棋連盟会長のファビアン・オスモンさんは、山田さんに大会の印象をこう話した。

「かつてはヨーロッパの一部の国や中国など伝統的に将棋をやってきた国と、それ以外の国の実力差は大きなものがあったが、非常に接近してきている。今まで将棋を指す人口がそれほどいないと思っていた国からも、強い人が出てきて素晴らしい将棋を指していた」

フランス代表ジャン・フォルタンさん左とフランス将棋連盟会長ファビアン・オスモンさん

 山田さん自身もトーナメントの様子を観て同じことを感じていた。ただそれで、必ずしも幅広い国で将棋人口が大きく増加しているとは言えないと指摘する。