「その国の競技人数が少なくても、今はネットを使って個人個人の実力をアップさせることができますから。国の広がりを持って大勢の子どもたち、大人たちが指すようになるには、まだこれから色々な努力と工夫が必要だと感じています」
オンライン対局が普及への効果が大きいのは確かだが、対面で指すことの大切さが浮き彫りになった面もある。ヨーロッパ将棋連盟の会長でドイツからきたフランク・レーヴェカンプさんによると、「コロナ禍で多くの将棋大会が開催されなくなり、その後に大人の大会は復活してきているが、子どもの部には参加者数が戻ってこない」という。これまでいた子たちが進学などで将棋から離れてしまい、その下の年代が対面で指す機会が得られなかったことが影響していると考えられる。
山田さんは言う。
「やっぱり対面で指すことで、将棋の楽しさを知ることもあるでしょう。それがなくなってしまうと、子どもたちは色々とやることが多く、一度将棋から離れてまた戻ってくるというのは、簡単ではないのかもしれません」
いま将棋界は世界に向かっている
今回来日した多くの選手たちは、大会後も自由対局を楽しみ、初めて向き合うライバルに目を輝かせていた。彼らは普段はネットでの対局が多く、対面でもプラスティックの駒を使っているそうで、木の駒と盤の感触がとても良いという声も聞かれた。
また今回の国際将棋フォーラムでは国際将棋トーナメントと並んで、「第2回都市対抗世界子ども将棋団体戦」の決勝が行われた。これは「将棋を世界に広める会」が招聘したもので、ベラルーシとドイツのチームが対戦し、ベラルーシが優勝を飾った。
対局後、両国の選手に将棋連盟から羽生善治会長と藤井聡太七冠と面会する時間が設けられた。立ち会った山田さんによると、子どもたちはとても感激した様子で、羽生会長から「何か聞きたいことはありますか?」と振られると緊張のあまり声が出なかったとのこと。代わりに引率者が質問した。
「将棋が強くなるためにはどうしたらいいですか?」
羽生会長は「これは藤井さんに答えてもらいましょう」と委ねた。藤井七冠は「自分は小さい頃は詰将棋の問題をよく解いていた。けれども、これが正解という勉強方法はないと思うので、自分が好きなやりかたを見つけるのが良いでしょう」と語りかけたそうだ。
子どもたちには、二人に会えたことが大きな思い出として残ったことだろう。