山田さんはこれからの展望についてこう話した。
「将棋連盟には英語のサイトを作っていただき、外国語の教材や情報発信をしていただけたらありがたいです。国際普及が進むということは、ある意味で将棋の市場が広がるということです。今将棋界は世界に向かっているということを、メディアを通して国内外に知らせていくことが大事だと思います。
そして広まっていく中では、いろんな変化が起こるでしょう。柔道はフランスやブラジルの方が日本より競技人口が多くなって、その間に柔道着の色やルールが変わったりしてきた。中には伝統の精神が失われたと言う人もいますが、私は嘉納治五郎が世界に柔道を広めるときに考えていたのは、それぞれの国のいわば文化風土に応じて若干の変化は当然あっても、根本にある精神が残ればいいということではなかったでしょうか。
今、各国で柔道を真剣に学ぶものは柔道が生まれた日本に敬意を持っている。柔道を通じて日本を好きになり、関心を持つようなことが生まれている。私は将棋も同様の道を歩むのではないかと思っています」
ヨーロッパで将棋が囲碁人口を上回る国 ベラルーシ
「好きな棋士は久保利明、大野源一、大内延介、大山康晴、菅井竜也。他にもたくさん知っていますよ。僕の得意戦法は中飛車です。将棋歴は8年ですね。チェスはオンラインでたくさんやったけど、将棋の方がずっと面白いよ」(ベラルーシ子どもチームメンバー バルコー・パブロ君)
1957年より続く「ヨーロッパ碁コングレス」は欧州最大の囲碁大会であり、毎年各国持ち回りで開催される。2週間ほどかけてリゾート地で行われ、見学者も含めて多くの人で賑わう。今年は1500人以上がエントリーした。1985年に始まった将棋の「ヨーロッパ選手権」は出場者が130人ほどの規模であり、期間や参加形式の違いはあるが、欧州では囲碁の人気の方が大きく上回るのが現状だ。
その中で将棋の方が囲碁人口よりも多い国が一つある。今回の国際将棋フォーラムにも参加したベラルーシだ。来日したセルゲイ・リセンカさんに話を聞いた。
「ベラルーシには将棋専門の道場があるんです。図書館に併設されたものや、ボードゲームなども楽しめるスペースではなく、将棋のためだけに作られた場所です。パンデミック前には200人ほどの会員がいましたが、現在は120人くらいになりました。社会全体でいえばチェスがもちろん人気がある。ソ連時代からの経験者が多いし、クラブもありますから。でも東洋のゲームの中では将棋が一番人気です。私が強調したいのは、将棋が囲碁よりも人気があるのは、日本とベラルーシだけということです」