今年の本屋が選ぶ時代小説大賞は
――みなさまから熱いご意見を伺ってまいりましたが、議論に議論を重ねた最終投票の結果、第14回本屋が選ぶ時代小説大賞は、赤神諒さんの『佐渡絢爛』に決定いたしました。誠にありがとうございます。
一同 (拍手)
――議論をしていただいた作品以外にも2024年で印象に残っている作品はございますか?
栗澤 地元、盛岡で活躍されている作家の大平しおりさんの『大江戸ぱん屋事始』(角川文庫)です。理不尽な理由で勤め先の油問屋をクビになった主人公の喜助が、友人に付き添って向かった長崎でパンの作り方を学んで、江戸でパン屋を始めるっていう物語なんですよ。もともとライトノベルを書かれていた作家さんですが、新たな時代小説の書き手として地元から応援していきたいです。
北川 畠中恵さんの大人気「しゃばけ」シリーズの最新作『なぞとき』(新潮社)が面白かったですね。江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱いのですが、あやかしとともに様々な騒動に巻き込まれながら成長していく。今回も安定の面白さで楽しめました。
久田 白蔵盈太さんの『実は、拙者は。』(双葉文庫)が面白かったです。棒手振りの八五郎という平凡かつ地味な男が主人公で、人並み外れた影の薄さが悩みだけど、独り身ゆえの気楽な貧乏暮らしを謳歌してもいる。そんな彼がある事件に遭遇して、「実は」、「実は」っていろんな人の秘密がどんどん明かされていくって話なんですけど、時代小説を読まない若い世代にもウケるんじゃないかなと思います。実際にライトノベルの近くで展開していたのですが、よく動きましたね。時代小説にはどうしても難しいイメージが付き物ですが、肩肘張らずに読める作品も沢山あります。そうした作品も広めていけたらと思っています。