今年いちばん面白かった作品を決める恒例企画。2024年の受賞作は?
選考委員は、目利き書店員として名高い、栗澤順一さん(さわや書店 外商部兼商品管理部)、北川恭子さん(旭屋書店 アトレヴィ大塚店)、久田かおりさん(精文館書店 中島新町店)です。
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――書店員のみなさんが「いちばん売りたい時代小説」を決める本屋が選ぶ時代小説大賞も今回で14回目を迎えました。
それぞれ書店の店頭のご様子や、書店を取り巻く環境はこの1年でどの様に変化したでしょうか?
栗澤 ニューヨーク・タイムズ紙の「2023年に行くべき52カ所」の第2番目に「盛岡市」が選ばれた効果もあり、今年は外国人観光客が多く見受けられました。盛岡名物のわんこそばのお店や、地元でも有名な古書店が紹介されたことで人の往来が増えたのは確かです。書店文化が根付いている街として紹介され、私の勤務するさわや書店でもそれをいかに活用して本の売り上げに結び付けるのか、日々頭を悩ませています。
久田 精文館書店中島新町店は、もともとコミックの売り上げが強い店舗なので、ゾーニングを変更したりしてテコ入れし続けています。昨今は、活字離れもあり、月刊誌や週刊誌など雑誌売り上げが苦戦していますが、店舗の新しい試みとしては、「ガンプラ」(「機動戦士ガンダム」シリーズに登場するロボットなどを立体化したプラモデル)を取り扱うようになりました。「本屋さんでガンプラ?」と思われるかもしれませんが、恐ろしいくらいに売り上げがあります。
北川 旭屋書店アトレヴィ大塚店も外国からの観光客が多く、コミックをお土産代わりに購入していかれます。文芸書や文庫も健闘していますが、特に時代小説を心待ちにされているお客様が多い印象です。駅ビルの中という場所柄、お子様連れのお客さまも多く来店してくださいますので、児童書やそれに関連したイベントを日々企画しております。
――ありがとうございました。では、いよいよ時代小説大賞の選考を始めさせていただきます。
候補作を選ぶにあたっては、まず歴史時代小説に詳しい文芸評論家の大矢博子さん、末國善己さん、細谷正充さんの3名に、今年度(2023年10月から2024年8月まで)のベスト10を選定いただきました。その中で複数の推薦がございました次の作品を候補といたしました。
『佐渡絢爛』赤神諒(徳間書店)
『海を破る者』今村翔吾(文藝春秋)
『惣十郎浮世始末』木内昇(中央公論新社)
『万両役者の扇』蝉谷めぐ実(新潮社)
『茨鬼 悪名奉行茨木理兵衛』吉森大祐(中央公論新社)
今年も、バラエティ豊かな5作品が揃いました。では早速、それぞれの作品の魅力や評価をお伺いしたいと思います。