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『佐渡絢爛』赤神諒

『佐渡絢爛』赤神諒

 ――元禄の世、金銀産出の激減に苦しむ佐渡で、立て続けに怪事件が起こる。消えた千両箱、落盤事故、能舞台の斬死体……。江戸から来た奉行の荻原重秀と、広間役として先に佐渡に入っていた間瀬吉大夫は、助手の与右衛門とともに事件の真相解明に動くが――。佐渡金銀山に隠された恐るべき秘密とは?

 赤神さんは、第12回『はぐれ鴉』(集英社)以来2回目のノミネートです。

 久田 佐渡の金銀は有名だけど、実は知らないことって多いですよね。今回この小説を読んで、鉱山に根付いた文化や佐渡の豊かさに驚かされました。また登場人物たちがとても魅力的で、誰も彼もみんな大好きって思った作品です。推しを見つけて盛り上がれる濃厚な時代ミステリーでしたね。あえて物足りなさを挙げるとすると、金山、銀山を掘る穿子たちの過酷さとか苦しさがあまり描かれていなかった点でしょうか。

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 北川 ミステリー仕立てで面白く読みました。久田さんが仰る通り、登場人物、特に吉大夫の人柄が魅力的ですね。グウタラで遊郭に入り浸っていても実はそこで書類を読み漁っていたり、人の気持ちにも聡く優しかったり、表と裏の顔を持つギャップに惹かれました。著者の佐渡への愛も伝わってきますね。

 栗澤 今、お二方からもお話が出てましたけれども、キャラクター造形が本当に見事です。あちこちで問題を請け負っても最後にさらっと解決してしまう吉大夫の魅力。こういう男になりたいものだと感じました。物語としては、謎解きが主軸だと思うんですけれど、その大きな柱があるにもかかわらず、物語の中心はあくまでも人。どこまでも人間の魅力を描いていて、謎はエッセンスにすぎないところが大変巧みだなと思って読みました。謎解きあり、青春あり、恋愛あり、チャンバラあり。時代小説がお好きなお客様には間違いなくおすすめできる一冊です。