記憶や判断に衰えが…
カバヤ側が保管するこの訪問時の録音を起こしたメモによると、次のようなやり取りがあったようだ。
親戚・女性 いただいたお手紙には、この方が厚子様の養子になられると書いてありますが。
厚子様 うかがっておりません、全然。
親戚・女性 ご存じではない?
厚子様 全然、存じません。(略)
親戚・男性 お手紙の中には厚子様が野津基弘様を養子にお迎えしたいと。
厚子様 全然、申しておりません。何にもそんな話はございません。
養子縁組の合意後にもかかわらず、厚子さんは親戚に対して縁組の存在自体を「知らない」と語っていたというのだ。
池田家関係者が語る。
「厚子さんは高齢なりに心身の変化もあり、当然記憶や判断にも衰えはあります。それに元皇族で、自分の意見を表立ってはっきり言いにくい立場。ですから真意はわかりませんが、最近に至るまで、養子であるはずの夫妻が訪問しても、『あの人たちは誰ですか』と口にすることもあるそうです」
実際に、この日に訪問した池田家親戚筋の男性が取材に応じた。男性は苦々しい表情で証言する。
「確かにそうしたやり取りがありました。厚子さまは、『動物園の話はお願いしたけれど、養子の話はしておりません』とはっきりおっしゃった。それを聞いた僕らとしては、養子縁組に疑いを持っています」
一方、カバヤ側もこの事態を重く見ていた。当時の記録にこうある。
〈10/8発言を打ち消すため、「知らない人たちがたくさん来て面倒だった」というような主旨の録画を残す〉〈今後、親戚筋の方の再訪については、会わせない〉〈厚子様が10/8の面談で不快感を感じたという対応に統一し、今後は会わせない〉〈厚子様の返答を我々は説明できない〉
厚子さんの“意思”そのものを、会社ぐるみで結論から作り上げているように映る記録だ。
手紙の“直筆”を演出する細工
そして、疑惑の本丸がここに――。
養子縁組から1年が過ぎ、今年3月になって広く送付されたのが、冒頭に紹介した手紙である。
別のカバヤ関係者が言う。
「野津夫妻の指示のもと、手紙は会社側が文面を起案・作成したものです。縁のある経営者らを中心に大量の送付先リストも作成し、送付も秘書室などが担いました」
その過程で施されたのが、手紙の“直筆”を演出する細工だ。小誌が入手した原本は、不可思議なものだ。