積極的に海外ツアーを行っていた
当人たちも、意識的かつ積極的に海外展開をしている。2023年末から2024年1月にかけてはアジアツアーを、そして4月と8月にはアメリカの西海岸と東海岸でそれぞれ2公演をおこなった。4月には世界最大の音楽フェスティバル・コーチェラでも単独ステージを披露。現在(2024年末)も2025年2月にかけてふたたびアジアツアーを展開している。
そうした活動は、アニメを起点とした人気を、現地でのライブを通じてエンゲージメント強化へと発展させる戦略的展開として受け止められる。つまりアニメファンを中心とするのでなく、アーティストとしての人気をさらに拡大させる方向に力を注いでいるように見える。
その点で、まさに現在は勝負の時期と言える。
「アイドル」のテレビ初歌唱がなぜ韓国だったのか?
こうした一連の活動のなかで、ひとつ気になることがある。それは昨年の「アイドル」をめぐることだ。
2023年4月に発表され、すぐに大ヒットしたこの曲は、日本の地上波テレビでなかなか披露されなかった。はじめてかつ唯一のパフォーマンスが、昨年大晦日の『紅白歌合戦』だ。だが、それは決して“テレビ”初披露でもなかった。その3か月前の9月21日に、韓国の音楽チャンネル・Mnetの『M COUNTDOWN』に出演しているからだ。
もちろん、YOASOBIはもともと積極的に国内の音楽番組に出演するタイプでもないし、出演にはスケジュール等のタイミングもある。ただ、「夜に駆ける」と並ぶ大ヒット作をわざわざ韓国にわたって先に披露したことは象徴的な意味を帯びている。
日韓の音楽番組の“違い”
日本の音楽番組の多くは、狭くて代わり映えのしないスタジオでパフォーマンスを披露せねばならず、かつ国内の放送とTVerで1週間程度しか公開されない。
対して『M COUNTDOWN』に出演すれば、そのパフォーマンスは即座にYouTubeで全世界に公開される。さらに、メンバーのikuraとAyaseのみをそれぞれ追ったFanCam(「チッケム」とも呼ばれる)、そしてステージ全体を定点で撮ったものと、4種類の動画が公開されている。これは韓国の音楽番組ではずいぶん前から当然のようにおこなわれている方法論だ。
CJエンタテインメント傘下のMnetは、放送局と言ってもケーブルテレビのチャンネルのひとつであり、どちらかと言えば製作会社に近い。年末には音楽イベント「MAMA AWARDS」を日本などで開催し、年々盛り上がりを高めている。