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「アイドル」が世界的に大ヒット

 とくに「アイドル」は海外でも大きなヒットとなった。Billboard Global 200(全世界の楽曲チャート)では最高7位にまで到達し、年間でも42位に入った。YouTubeの再生回数は約6億に達している。動画配信サービスによって日本のアニメがグローバルに評価を高め、それにともなってYOASOBIも浸透し、人気が高まっていった。

YOASOBI「アイドル」(2023年)

 以上を踏まえれば、YOASOBIのこれまでのキャリア展開もクリアになるだろう。デビュー曲「夜に駆ける」で獲得したバイラルな人気を、YOASOBIは「アイドル」などアニメタイアップで拡大させていった。

 それは数字にも表れている。発表曲のYouTubeのMVとSpotifyの再生回数を比較すれば、「怪物」「アイドル」「勇者」だけYouTubeのほうが上回っている。「祝福」も他曲と比べれば再生回数が拮抗している。これらはアニメの人気がMV再生数に結びついたことを意味すると見ていい。

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作成=松谷創一郎氏

 もちろん、アニメの主題歌だからといって必ずしもヒットに結びつくとは限らない。『〈物語〉シリーズ:オフ&モンスターシーズン』の主題歌として、 今年9月に発表された「UNDEAD」は、 動画の配信先が限定されていたことなどもあり、大きなヒットにつながっていない。こうした近年のヒットの仕方は、バイラルヒットだった初期の「夜に駆ける」などからは変化した。タイアップするアニメの人気が反映される傾向があるからだ。

 そうした状況は、「アニメ頼り」と認識されるかもしれないが、YOASOBI自体がタイアップありきで生まれたことを考えれば、現在の活動はけっして否定されるべきではないだろう。フィクション作品の世界観をみずからに落とし込んで音楽として具現化していくことが、このユニットのそもそものコンセプトだからだ。むしろ、そこでしっかりと結果を出していることは、その成り立ちを考えれば称賛に値する。

 そして現在は、かねてから日本のコンテンツ産業において一般化していたタイアップやメディアミックスが、アニメを中心にグローバルに展開している状況だ。それは、コンテンツ単体だけでなく、メディアミックスの方法論そのもののグローバル展開と捉えられる。その状況において、YOASOBIはみずからの実践を通して中心的な存在になったと言える。