そしてそうした番組やイベントで創られた音楽コンテンツは、YouTubeでほとんどが配信される。これはコンテンツの二次使用など知的財産の運用を重視しているからであり、同時にYouTubeでそれなりの売上が見込めるからでもある。
実際に、『M COUNTDOWN』などが配信されるMnet K-POPのYouTubeチャンネルの登録者数は約2150万人にもなる。再生回数が1000万以上の動画も多い。「アイドル」のパフォーマンス動画も、4種類すべてを足すと約1100万回再生に達する。このチャンネル自体が、強い伝播力を持つメディアだ。
音楽コンテンツの伝播力を考えたときに、YOASOBIが日本の地上波テレビではなく、このグローバルに向けた韓国の音楽番組を選択したのは実に合理的な判断だった。つい先日も韓国SBSの音楽番組「THE SHOW」に出演して、「アイドル」と新曲「New me」を披露したばかりであることは、それを裏付ける事実だろう。
“紅白出演ナシ”は大きな問題ではない
そうした状況からは、グローバルな活躍を志向し、それを一線で実践するアーティストと、現在の日本のメディアシステムとの温度差を強く感じる。今回の『紅白歌合戦』の出演見送りも、YOASOBIにとっては大きな問題ではないのだろう。
[テレビ-CD]時代の方法論ではなく、[YouTube・動画配信-ストリーミング]時代にそれらのメディアにいち早く乗り、人気をグローバルに拡大させていったのがYOASOBIだ。『紅白歌合戦』に求められるのは、そうしたメディアの変容のなかでどのような構成にしていくかだろう。
そしてYOASOBIにとって来年(2025年)に注目されるのは、アニメタイアップによって得たグローバル人気を、しっかりと自身の人気に変換し、そして定着させていくことだ。そのとき必要なのは、デビュー曲「夜に駆ける」のような楽曲の力によるバイラルなヒットをグローバルでも生み出すことにあるだろう。
本人たちの意欲=強い海外志向は十分にある。あとはさらなる結果を出せるかどうかだ。