2024年のNHK紅白歌合戦に初出場するアーティストは10組。そのうちの1つが、男性ダンス&ボーカルグループのDa-iCEである。

Da-iCEの5人(Da-iCE公式Instagramより)

「スキルがものをいう時代」に躍進したDa-iCE

 2011年に結成され、2014年にメジャーデビューを果たしたDa-iCEは、工藤大輝、花村想太、岩岡徹、大野雄大、和田颯の5人組。メジャーデビューから10周年という節目の年にこの大舞台への切符を手にしたのは、これまで積み重ねてきた彼らの実力の証と言えるだろう。

 この編成にしては珍しくメンバーの工藤自らが作詞作曲にかかわり、さらに5人それぞれがダンスやボーカルに関する卓越したスキルを持っているDa-iCEの存在は、ダンス&ボーカルのシーンを追っているファンの間では長年注目されてきた。その名がより広く知られるようになったのは、2020年代に入ってからのことだ。

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 まず、2020年11月にリリースされた「CITRUS」が2021年の日本レコード大賞を受賞し、高い歌唱力が一躍評判を呼ぶ。その後もダンサブルなパフォーマンスとハイトーンのボーカルが炸裂する「スターマイン」がバイラルヒットを記録し、2024年にはドラマ主題歌としてリリースした「I wonder」が大きな話題に。この楽曲の振り付けがソーシャルメディア上でバズを巻き起こすとともに、歌番組への出演ではステージ上で静止する緩急を盛り込んだ演出も注目された。これらのトピックが、Da-iCEをボーイズグループのトップランナーへと押し上げたのである。

 彼らの人気を支えているのは、磨き抜かれたダンススキルにほかならない。ボーイズグループの共演が一般的になってきた昨今においても、Da-iCEの存在感は群を抜いている。2024年7月に放送された音楽番組「音楽の日」(TBS)では、複数のグループが順々にカバーダンスを披露する企画において、コミカルさとハイレベルな技術が融合したYOASOBI「怪物」のパフォーマンスを披露してその高い表現力を誇示した。

 また、12月に放送された「それSnow Manにやらせて下さい」(TBS)の年末特番では、花村がSnow Manの面々やGENERATIONSの小森隼、Travis Japanの松倉海斗らと共演し、随所でスタジオの感嘆を呼ぶダンスを見せていた。

 2020年代におけるダンス&ボーカルのシーンは、スキルの価値が見直される局面に突入している。K-POPの隆盛や、かつての主流だった48グループや坂道グループ、さらには旧ジャニーズ事務所の影響力が相対的に低下したことで、真に歌い踊れるグループが支持を集める流れが生まれた。この潮流を作ることに一役買い、かつさらにそれを加速させているのがDa-iCEである。彼らはそのスキルとパフォーマンスで、時代が求める新たなアイコンとしての地位を確立していると言えるだろう。

紅白の出演者から見るボーイズグループの栄枯盛衰

 Da-iCEがレコード大賞を受賞する直前の2021年8月9日、彼らは「Kartell」(※1)という楽曲をリリースしている。ハードなギターサウンドで始まるこの曲で歌われているのは、「嘘くさい常識」「くだらない暗黙の了解」「忖度と不感症」(いずれも工藤の作詞による同曲の歌詞)。

 この歌詞についてグループ側からの具体的な説明はなされていないが、実力派の男性ダンス&ボーカルグループがこんなことを歌うのはなんとも意味深である。なお、Kartell=カルテルとは市場における競争を阻害する不当な取引制限のことを指す。