海の近くを歩いていくと…
海の周りを少し歩く。南側は海沿いが公園のように整備されていて、その真上をシーサイドラインの高架が走る。
海の上にはたくさんの船が浮かんでいて、南東の奥には野島公園、さらに先には日産の追浜工場なども見える。このあたりの光景は、まさしく“シーサイド”。シーサイドラインは平潟湾の真ん中あたりを横切って北東へと進んでゆく。
対岸の北側には釣り船屋が軒を連ね、平日の昼過ぎというのに沖から戻ってきた釣り人たちの姿も目立つ。
さらにだいぶ距離は離れているけれど、まっすぐ北に進んで金沢文庫駅の近くには称名寺。鎌倉幕府を牛耳った北条氏の一族で、金沢区一帯を治めた金沢北条氏の菩提寺なのだという。春の桜に秋の紅葉と、四季折々の楽しみがある名刹なのだとか。
このように、駅前は商業ゾーンの趣が強く、その先には海が出迎えてそれを囲むような景勝地。それでいて、少し脇道に入ってゆくと、一戸建ての住宅が並ぶ新興住宅地のようなエリアがあったり、巨大なマンションが並ぶエリアがあったり。まるですべてが揃っているような、そういう町が金沢八景なのだ。
「北陸っぽい名前」がナゼついた?
金沢八景という呼び名は、江戸時代に生まれたという。
もともと北条氏の所領だった鎌倉時代から景勝地として名高かったといい、金沢北条氏の北条実時がさまざまな文書を集めた金沢文庫を築いている。鎌倉幕府滅亡とともに衰退したが、現在は復興して博物館になった。
ともあれ、そうした時代から海に臨む景勝の町、金沢。江戸時代、元禄年間に明の僧・心越禅師がこの地を訪れて、その景勝ぶりを中国の瀟湘八景になぞらえて八編の漢詩を詠んだ。これが、「金沢八景」のはじまりだ。