多くの人生を変えた

 知的で礼儀正しい彼を、ミコの父で店主の高橋(本木雅弘)は親しみをもって受け入れるが、ふたりが将来を考えだすにつれ、娘を守るために頑なな態度をとる。実は、ミコは胎内被爆者であり、いわれなき差別を受け、故郷を離れざるを得なかった生い立ちがあったのだ。クリストファーにすべてを打ち明けた翌日、ミコは父とともに忽然と姿を消してしまう。

©2024 RVK Studios 配給:パルコ ユニバーサル映画

 コルマウクル監督が向き合ったもう1つのテーマ、それが被爆者であった。被爆者は傷や病気に苦しんだだけではなく、まるで感染病患者のように見られ、差別され、社会から追われた。臆測や偏見による情報が錯綜したコロナ禍の絶望と重なるようでもあった。

「デリケートな問題であり、日本人ならどう表現するか、助言もいただきましたが、私は、正面から向き合おうと思いました。何もかも破壊された広島のことを私たちは知っている。どれだけ多くの人の人生が変わってしまったのか。折しも被団協がノーベル平和賞を受賞しました。いまこそ将来同じことが起きないように、考え続けていくことが大事。しかし、いまだにあの爆弾を使おうとする人間がいることに驚きを隠せない。こういったとても大きなテーマを、とても小さなふたりの宇宙から描いたことが、この作品の魅力でもあると思います。日本のみなさんに見てもらえることを心から願っています」

©2024 RVK Studios 配給:パルコ ユニバーサル映画

Baltasar Kormákur/1966年、アイスランド生まれ。1990年にアイスランド芸術アカデミーを卒業、俳優として活躍。映画製作会社Blueeyes Productions / Sögnを設立し、2000年、長編映画『101 Reykjavík』を製作。Variety誌の「注目すべき監督10人」に選ばれた。主な監督作品に、『湿地』(06)、『エベレスト 3D』(15)、『殺意の誓約』(16)、『アドリフト 41日間の漂流』(18)、『ビースト』(22)などがある。

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『TOUCH/タッチ』
1月24日(金)公開
出演:エギル・オラフソン、Kōki,、パルミ・コルマウクル、本木雅弘、奈良橋陽子、ルース・シーン、中村雅俊 他
配給:パルコ ユニバーサル映画
https://touch-movie.com/

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