新東宝は会社の規模が大きくなく、その活動期間も短かった。しかも、低予算のニッチな作品が多い。そのため、旧作邦画の中でもマイナーな扱いではある。
ただ、後に日本映画界を支える俳優たちを多数輩出してきたことも、忘れてはならない。丹波哲郎、若山富三郎、天知茂、菅原文太、高島忠夫らは、いずれも新東宝に見出されて映画スターとしてのキャリアを始めている。
そうした中に、重要なスターがもう一人いる。それが宇津井健だ。彼もまた新東宝で映画デビューを果たしている。
そして、今回取り上げる『スーパージャイアンツ 鋼鉄の巨人』は、新東宝時代の宇津井健を代表する作品だ。
宇津井の演じるスーパージャイアンツは、子供向け特撮ヒーローの先駆け的な存在で、計九作が作られる人気シリーズになっている。ただ、その後の洗練された特撮ヒーローを先に知っている身からすると、スーパージャイアンツの造形は「カッコイイ」とはとても思えないものである。
真っ白い全身タイツのような衣裳に身を包み、中途半端な丈のマントを肩からなびかせる。しかも、顔だけは宇津井本人が丸出しという状態――。『月光仮面』より前の作品であるため、キャラクターデザインのノウハウが全くない時代とはいえ、失礼ながらパッと見では笑えてしまう。
最大の問題は下半身だ。衣裳がパツパツで、そのために宇津井の下半身の膨らみが極端に目立っているのだ。それを関根勤と小堺一機が深夜ラジオでネタにしており、筆者が本作を知ったのはその番組だったため、高校時代に大井武蔵野館だったかで初めて観た際は、宇津井の下半身にばかり目が行ってしまった。
ただ、大人になって何度も観ているうちに、気づいたことがある。それは、造形に難があるものの、ちゃんとヒーローに見えるのだ。
地球での核開発を止めるためエメラルド彗星からやってきたスーパージャイアンツと、核爆弾により世界征服を企む悪の組織との闘いが描かれるのだが、監督が石井輝男なだけあり、アクションはスピーディで切れ味がある。そして何より大きいのは宇津井だ。とにかく凜々しいのである。
仲代達矢や佐藤慶と共に俳優座養成所で役者として研鑽を積んだ身としては、こうした衣裳に包まれることには気恥かしさもあっただろう。だが、全くそれを感じさせることなく演じ切っているのだ。
宇津井といえば、いかなる役柄も堂々と演じ切る、ハキハキした大熱演をさまざまな作品で繰り広げてきた。その臆面のない演技スタイルは、既に本作でも発揮されていた。
