「きんぴらごぼうは、おいしくてビックリしました」

――お笑いの世界は、ことさら上下関係が厳しそうですしね。

きり 人力舎はだいぶ緩いらしいですけど。ロシア語でも敬語はあるにはあるんですけど、先生たちに対して使うものだったりするので。

 電車賃も高くないですか? モスクワの地下鉄だと、30ルーブルの1回券でどこまでも行けるので。30ルーブルというと、いまだと日本円で50円もいかないぐらいだし。

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――食べ物はどうです? モスクワでも、家では日本食だったとは思いますが。

きり 手に入らない食材が多かったので、日本に来てから初めて食べるものがけっこうありますね。きんぴらごぼうは、おいしくてビックリしました。先輩に居酒屋に連れて行ってもらって、お通しで出てきて。最初は、木の根っこかなんかだと思ったんですよ。

「なんだ、これ? 食べれるのかな」と思ったんですけど、腹をくくって食べたらおいしくて。焼き鳥もロシアにないから新鮮だったし、おいしかったですね。ロシアも串焼きはあるんですけど、使ってるのが豚肉ばかりで、ソースでグッチョグチョなんですよ。

 先輩も同期も、私があんまりに喜ぶから「連れていきがいがある」と言ってくれて、いろいろと連れて行ってもらってます。

 ただ、納豆だけは、いまだにちょっと抵抗が。

「ご飯食べに行こう」っていうのがわからなかった

――モスクワでも、誰かと食べに出掛けたり。

きり 「ご飯食べに行こう」っていうのが、私にはわからなくて。友達が1人か2人しかいなくて、音楽院ではゼロでしたし。私に友達がいなかっただけだからかもしれないんですけど、ロシアでは友達を「ご飯を食べに行こう」って誘わないんですよ。

「美術館に行こう」「散歩に行こう」っていうのはあって、その途中で何か食べるとかはあるんですけど、ご飯メインで「行こう」ってのがなくて。なので、先輩から「ご飯行こう」って言われたときは、すっごい考えちゃいました。

――現在はこうしてお笑いの世界にいますが、音楽でなにかやっていこうと考えたことは。

きり ないですね。もともと音楽で食べていく気もないですし。

 ピアノをやっていても、面白くはなかったです。好きな曲を弾いたりしているぶんにはいいんですけど、やっぱりそれだけじゃダメなので。自分はなにかを作るほうが性には合っているし、そうなると他人の曲をずっと弾いていることに我慢ができなくなるので。でも作曲はどうしてもしたくなくて。