「キンコメさんが面白いと言った芸人さんも見るようになって」
――それでも、ほかの芸人のネタも面白く感じられるようにはなりますよね。
きり キンコメさんが面白いと言った芸人さんも見るようになりました。でも、やっぱり難しいところがあって。日本の常識がないから、サラリーマンがテーマのコントを見てもよくわからないんですよ。「サラリーマンって、なんだ?」って引っかかっちゃったら、それ以降はなにも頭に入ってこないので。
「課長」とか言われても、課長と部長がわからないので戸惑うんですよ。社畜とかの意味もわからなかったですし。
――「キンコメさんが面白いと言った芸人さん」の顔触れというのは。
きり アンジャッシュさん、ドランクドラゴンさん、東京03さん、ゆってぃさん、インパルスさんとか。ほんと、キンコメさんのおかげで好きになりましたね。あと、ねづっちさんも。ロシアには絶対にないタイプのお笑いなので、「こんな笑いの取り方があるんだな」と。
いまだに、ツッコミのほうが奇妙に感じる
――ボケとツッコミの妙みたいなものも、だんだんと理解を。
きり ロシアもボケはあるんですけど、ツッコミがないので。なので、ツッコミのほうをボケのように捉えていましたね。「なんでやん」って頭を叩いたりすることに「なんでやねん」って、思うんですよ。「この人は、なんだって自分がこんなに正しいと思ってるんだろう。暴力まで振るって」みたいな。それでツッコミを悪だと考えてしまうので、共感ができないんです。
――いま、芸人になっているということは、ピアノよりもお笑いに魅せられたわけですよね。
きり キンコメさんがいろいろあって、私もお笑いを見なくなってたんですよ。でも、音楽院に入ったタイミングで親が日本に帰ったことで、自分の時間が増えて。また、お笑いを見るようになったんです。
で、コロナ禍に入って、さらに自分だけの時間が増えて、いろいろと考えるようになって、このままピアノを一生続けていくのは嫌だなと。でもやめるなら、心からやりたいことが見つかる時だと考えていて、でお笑いをやりたいと本気で思えたので、3年生で音楽院をやめました。
――音楽院は4年制?
きり 5年です。
――残り2年。周囲から引き止められませんでしたか。
きり 5歳から教えてくれていた、音楽学校の先生は泣いてました。
――「キングオブコメディを見てピアノをやめたくなった」と。
きり 言うわけないです。「誰だよ?」って、余計に混乱しますから。シンプルに「やめたいから、やめます」とだけ話しました。