昨年8月、Xにて「この世の全てを疑ってそうな目をしてる」のコメントとともに「出身地:静岡県生まれ、モスクワ育ち、東京に実家有」「最終学歴:チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院ピアノ科中退」という、ただ者ではない感に満ちた経歴が紹介され、注目を浴びた芸人きり(21)。

 そんな彼女に、日本のお笑いに魅せられたきっかけ、日本で衝撃を受けたこと、お笑いの難しさなどについて話を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む

きりさん(21)

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日本のお笑いで「キンコメさんだけを好きになって」

――ピアノを弾く一方で、10歳か11歳でキングオブコメディにハマったと。どんなきっかけで?

きり 親が日本語のしゃべり言葉を私に教えたくて、最初は日本のニュースや映画を見せていたんです。けど、私の食いつきがあまりにも悪かったので、「じゃあ、お笑いを見せてみよう」となって。で、見せてみても、私は日本の常識がなかったので、日本のお笑いを理解できなくて、面白さがわからなかったんです。

 それでも、いろいろと見せられるなかでキングオブコメディさんの「いじめられっ子の家への訪問」というネタに感動してしまったんですね。

 そこからキンコメさんだけを好きになって、ネット上にあるものすべてを見漁って、日本にいる祖母に「DVDを送って」とお願いして、DVD全タイトルを送ってもらって。それを何度も見て、という。

――「いじめられっ子の家への訪問」のどこが刺さったのでしょう。

きり ほんと、いっぱい見せられるなかで、それだけ大笑いしたんですよ。当時はそんなに深く考えてなかったんですけど、哀愁で笑いを取れるってことを子供なりに初めて知ったというか。

 

――ロシアのエンタメ的なものには触れてはいたのですか。

きり 見てないですね。うちはYouTubeを視聴する時間が30分と決められていて、その短い時間ではたいしたものは見れないなと悟っていたので、あまり興味が持てなくて。映画は親指定で見てましたけど、モスフィルムとかの旧ソ連の作品ばかりで。旧ソ連の映画って、すべてYouTubeで公式で配信されていて、無料で見られるんですよ。

 本も読んではいましたけど、偏っていて。12歳くらいでロシア語版の『箱男』を読んで、初めて日本語で本を読みたいと思った作家が安部公房だったんです。新潮社から出ているものはほとんど読んで。ロシアの作家だと、(ミハイル・)ブルガーコフとか(ニコライ・)ゴーゴリが好きでしたね。

――日本語教育として見せられていた、日本のアニメなどはどんなものが。

きり 一時期、『ONE PIECE』を母が見せてくれていたんですけど、そんなにハマらず。もう、キンコメさんだけしか刺さらなかったですね。