キングオブコメディが在籍していた「人力舎」一択で

――では、19歳で音楽院やめて東京に。すぐに芸人になろうと動き出したのですか。

きり 人力舎の養成所に入ろうとしたんですけど、学費が60万円なんですよ。なので、1年間週5で書店のバイトをして60万円貯めて、20歳で養成所に入りました。

――キングオブコメディが大好きだったゆえに、彼らの在籍した人力舎に行こうと。

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きり 人力舎一択でした。他は資料請求もしてないので。

――ちなみに、アルバイトは初めてでしたか。

きり ロシアでピアノを教えたこともありましたけど、おこづかいを稼ぐ程度で。ちゃんとしたバイトは、その書店が初めてでしたね。漢字が読めないとか、書けないとか、そこは苦労しましたけど、慣れてきたらそんなでも。書けない漢字があったら、先輩に「書いてください」って普通に頼んでましたし。

――人力舎の養成所を受けたさい、経歴に関してなにか言われたのでは。

きり はい。面接では「ワタナベ(エンターテインメント)に行きなさい」って言われました。でも、キンコメさんの事務所だし、私はコントが書きたいのもあって。人力舎はコントが強いので、やっぱり一択でしたね。

 

偏ったコミュニティにいたので、お笑い界に馴染めなくもなく

――音楽の世界からお笑いの世界へ移ってみて、すぐに馴染めましたか。

きり 芸人って、どうしても変な人たちが多いんですけど、変でも面白い人たちは一緒にいたら楽しいですし。音楽家もやっぱり変ですし、芸人も変なので。すごく偏ったコミュニティのなかで、ずっと生活してきたので、馴染めないとはそんなに。それでも日本のほうが楽だなと思ったのは、距離が近すぎる人が多くないってことですね。

 ロシアは距離が近い人が多くて、それが自分としてはちょっと好きではなかったので。


――日本に来てから驚いたことって、なにかありましたか。

きり カーブミラー。ロシアにはないので、「なんだこれは?」と思いましたね。化粧直しには、遠すぎるじゃないですか。最初、なんのためにあるのかほんとにわからなくて。あと、「電柱、邪魔だな」とか。「電柱がなければ、もっと景色がきれいだろうにな」って。

 ヨーグルトには感動して。

――味に。

きり いや、蓋。日本のヨーグルトは、蓋の裏にこびりついてないんですよ。あれ、感動しません? アロエヨーグルトを食べたとき、蓋の裏がきれいで驚いて。ベチャって付いてると、悔しいじゃないですか。

 それと、いっつもビックリするのが敬語ですね。「こんなに使わなきゃいけないのか」とか「先輩とここまで敬語で話さなきゃダメなのか」って。ロシアでは、先輩という文化がないので。あっちでは30歳ぐらいの人たちとも平気でタメ口でしゃべっていたので。それが、1期上の先輩とか、年下でも先輩だったら敬語という。その感覚が私にはないので、すごく不思議ですね。