直接声を聞くのはリモート取材のとき以来なので、かれこれ3か月近くがたっている。何が起きたのか、M側から送られてきたメッセージについての印象を尋ねると、こんな事情を話してくれた。

「閑散期なんですよ。お客さんが減っちゃって。昨日、一昨日なんて3人とか4人とか。

 もう新規のお客さんはほぼゼロですね。お客さんに聞いたら日本人がまた何人か入ってきたって言ってて。私のリピーターさんも新しく入ってきた日本人の子に流れちゃったし。ほかの子たちがどういう状況なのかさっぱりわからないけど、おそらくなんですけど、日本人の女の子が増えたせいで飽和状態になってるっぽいんですよ……」

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 濡れ手で粟で稼ぎ続けられる。そんなうまい話は海外にもないのだ。実際に情報を集めてみると、北米や欧州での稼ぎに陰りが見えてきたと話す出稼ぎ嬢は多い。需要と供給のバランスが崩れ始めているのだ。日本人だってチヤホヤされるのはミユのように「新人」である3か月が限度というのもうなずける。

「リスクがあっても私はこっちの生活を選ぶ」

 ミユに「日本に帰る気はないのか?」と尋ねてみた。

「う~ん、この前、日本にいる普通の仕事をしている友達と話したんだけど、月の手取り15万円で働いてるって言っていて。『え? それ私の先月までの日給じゃん』って。直接本人には言えないけど、そんな日本で働くなら、ちょっとはリスクがあっても私はこっちの生活を選ぶな。オーストラリアとか別の国に渡るのもいいかなって考えてて。そっちにしっかりとした実績を持ってるスカウトがいないか探してるところです」

 何げない会話だったが、ミユは出稼ぎの「沼」にどっぷりハマっていた。きっとオーストラリアに行くのだろう。だが、その先にどんな未来があるというのか。流れ流れてどこにたどり着くのだろう。

 ミユの末路を考えたとき、Mの顔が浮かんできた。Mにとって日本の出稼ぎ嬢は「使い捨て」「消耗品」だろう。いつだって女衒にとって女とはそのようなものだ。