レントゲンを撮り、傷の手当てをした後、背中に抗生剤等をミックスした点滴を受けた。翌日、朝一でかかりつけの獣医に行くよう診断書をもらいセンターを出た。

次は女性の番。その夜唯一、動物咬傷への対応が可能だった大学病院の救急外来を受診した。足首に20cmのひっかき傷、ひざは二噛みされていて、歯型が二つ、牙が食い込んだ小さな穴が4つ開いていた。出血はしていたが、大したケガではない。

問題は、破傷風と狂犬病だ。破傷風は、傷口から入り込んだ「破傷風菌」という細菌の毒素によっておこる感染症で、発症するとさまざまな神経障害を起こし、重症例では呼吸ができなくなり命に危険を及ぼす恐れがある。

ADVERTISEMENT

医師は破傷風ワクチンを注射した後、言った。

「破傷風の予防注射は今後半年であと2回打ってもらってください。うちでもいいですし、ご近所の病院でもしてもらえます。心配なのは狂犬病です。「暴露前接種」「暴露後接種」があり、後者のためのワクチンが国内では入手困難となっています。しかし感染の可能性はゼロではありません。発症した場合の致死率は100%なので、今後3カ月は、ちょっとでも熱が出たらすぐに医療機関を受診してください。その際、ハクビシンに噛まれたことを必ず医師に伝えてください」

ペットになった「犬猫以外」の動物たち

「え、この近所にハクビシンがいるの、山にいる動物じゃないの。噛みつかれたなんて聞いたこともない」

後日、犬友はじめ周囲に話すと、ほとんどの人たちに驚かれ、逆に女性も驚いた。身近で暮らす健気な生命に、気付いていない人のなんと多いことか。大抵が無関心なのだった。

“エキゾチックアニマル”という言葉を聞いたことがあるだろうか。環境省の資料によると、「明確な定義はないが、主要な団体などにおいて以下のような定義がみられる」という。

「犬、猫以外の飼育動物」

公益社団法人日本獣医学会、日本獣医エキゾチック動物学会、公益社団法人日本獣医師会、
九州エキゾチック動物臨床研究会、ペット栄養学会誌