誰もが知っているおとぎ話や童話に巧みにミステリ要素を加えた「昔ばなし」シリーズ、「赤ずきん」シリーズが人気を博している青柳碧人さん。このほど刊行された新作『令和忍法帖』では「忍者」を題材に選んだ。明治維新によって姿を消したかと思われていた忍者が、実はひそかに警察組織に組み込まれており、現在も活躍しているという設定の連作短編集だ。
「もともと山田風太郎の『甲賀忍法帖』がすごく好きで、自分でも忍者を登場させる小説を書きたいと思っていたんです。江戸時代を舞台にすると『甲賀~』を意識し過ぎてしまうから、舞台は現代で。さらにミステリ的なプロットを組み込んだらどうだろうと考えました」
出来上がったのは活劇あり、本格ミステリ要素あり、人間ドラマありの超エンタメ作品だった。普段は会社員、キャバ嬢、料理人、小学生として日常をおくる忍者たち――。しかし警察の手に負えない事件が発生すると指令を受けて任務にあたる。
彼らは特殊な体質や受け継いだ忍術を用いて活躍するのだが、そんな忍者のワザに関する「科学的なウンチク」も本作の大きな魅力だ。たとえば、ヤモリのようにどんなところでも登っていける木陰(こかげ)一族は代々、手のひらや足の裏に微細な毛が生えており、それによって生じるファンデルワールス力によって吸着力を得ているのだ。