ターニングポイントは『ジュラシック・パーク』

山崎:僕、『スタッフロール』で書かれていること全部経験しているんですよ。最初に白組に入った時はミニチュアメーカーにいて、そのあと特殊メイクも少しやって、段々とそれらがCGに置き換わっていったんですけど。小説ではアナログとCGで時代とキャラクターが分かれているじゃないですか。でも俺、両方やってると思って(笑)。

深緑:凄いですよね。そういう方って、あまりいないと思うんですけど。

山崎:アナログ造形からCGにチェンジした人間はあまりいないかもしれないですね。向き不向きがあって、デジタルに移行してすぐに「こんな楽しいものはない!」という人と、やっぱり粘土でやらないと気が済まない人に分かれるみたい。知り合いの天才的な造形師も何回かCGにトライしたけど、思ったようにいかないから駄目だって言ってました。

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 そういえば『スタッフロール』で特殊造形師のマチルダが『ルクソーJr.』(ピクサーが1986年に製作した短編CGアニメーション)のCGのクオリティにショックを受けて造形師を辞めちゃうじゃないですか。僕だったら辞めない。むしろ燃えたと思う。

『スタッフロール』深緑野分(文春文庫)

深緑:あそこはどっちの反応になるか、分からない部分があって……。

山崎:実際には、むしろ『ジュラシック・パーク』のテスト映像でかなりの造形師が心を折られたんですよ。

深緑:私は『ジュラシック・パーク』でCGに目覚めたので、それも書きたかったんですけど、うまく作中の時代と合わせられなくて断念してしまいました。

山崎:振り返ると、あそこが本当のターニングポイントだったなと。あれでデジタルに行った人間と、もう折れちゃった人間に分かれたと思います。