1980年代ハリウッドの特殊造形師と現代ロンドンのCGクリエイター。映画の特殊効果に魅せられた二人の女性を通して創作者の情熱と苦悩をリアルかつ力強く描いた、深緑野分さんによる直木賞候補作『スタッフロール』。
その文庫化を記念して、2024年に『ゴジラ-1.0』で第96回アカデミー賞〈視覚効果賞〉受賞という偉業を成し遂げた白組の山崎貴監督へ深緑さんがインタビューを敢行! ディープなVFX談義から、山崎監督流マネジメント術、『ゴジラ-1.0』の製作秘話まで、ここでしか読めない話を前後編でお送りします(後編は3/14公開予定)。
キューブリック以来の快挙
山崎:『スタッフロール』読みました。現場にいる人じゃないと感じないようなことが書かれていて、すごく調べられてますね。生々しいです。
深緑:うわー、恐縮です。そもそも私はアカデミー賞だとまず〈視覚効果賞〉をチェックするようなオタクなんです(笑)。山崎監督はCGに携わりながら監督もされて、本当にキューブリックみたいですよね。
山崎:〈視覚効果賞〉を監督で取ったのはキューブリック以来だと聞いて、僕もびっくりしました。そうそう、キューブリックといえば『スタッフロール』にリズ・ムーアの名前が出てきたのは嬉しかったです。
深緑:よかった! 気づいていただいて。
山崎:『2001年宇宙の旅』のスターチャイルドの造形をやり、『スター・ウォーズ』のストームトルーパーもラルフ・マクォーリーの初期スケッチより、リズ・ムーアが完成させたもののほうがちょっといいんですよ。
深緑:甲冑っぽい感じが断然かっこいいですよね! 私も『スター・ウォーズ』が大好きで、絶対にリズ・ムーアを出したかったんです。
山崎:あの頃の最先端のチームには女性がすごい少ないですよね。そのなかで彼女は本当にいい仕事をしたのに、自動車事故でかわいそうなくらい早く亡くなってしまいました。