いきなり山崎監督が肉を焼き始め……

深緑:野島さん的に一番納得いっているシーンはどこになるんですか?

野島:海神(わだつみ)作戦でゴジラにダミーの船へ熱線を吐かせるシーンがあって、そこですごい津波が起きるんです。最初は本当にどうしたものかという出来だったんですが、どうにかして良くしてやろうという気持ちでやったら波の重厚感が出て、逆にほかより良いシーンになりました。2週間でやったんですけど、あの時はとんでもないメンタルでした。

 

深緑:2週間で! すごいですね。他のスタッフの皆さん、制作中のチームの雰囲気はどうでしたか?

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野島:いつもどおりですね。調布スタジオって良い意味で頭おかしい、普通の会社じゃないんです(笑)。山崎(貴)監督とかがいきなり肉を料理し始めて、みんなで「おまえら、俺の食うな」とか言いながら食べたり。会話もあまり仕事の話はしてなかったです。みんな黙々とやりながら、たまに誰かいじってたり、いじられてる人もそれに乗っかったりして。

深緑:和気あいあいとしているんですね。あまりピリピリした感じにはならないんですか?

野島:うーん、ならないですね。

『パイレーツ・オブ・カリビアン』に度肝を抜かれ

深緑:野島さんが追求したい動きというのは、やっぱり水や海なんですか?

野島:今のところはという感じですかね。僕が一番度肝を抜かれたCGって『パイレーツ・オブ・カリビアン』の水の表現なんですよね。船が水の中から出てくるとか、渦巻きの中で戦ったりとか。それを見た時に「CGってこんなのできるんだ」と驚きました。

深緑:その体験が大きいんですね。

野島:いまだにあれが最高峰というか。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のとくに2作目(『デッドマンズ・チェスト』)と3作目(『ワールド・エンド』)の映像はちょっとレベルが違うんですよ。今でも実写にしか見えない。『パイレーツ・オブ・カリビアン』に度肝を抜かれたから、ゴジラとかも頑張れたのかもしれません。何も知らない当時は「ハリウッドってこういうのができるんだ!」って無邪気に思っていたんですけど、大人になってこの仕事をしてから「あれは異常だったんだ」というのを実感しています(笑)。