かつては「結婚すれば幸せになれる」と考えている人が多かったが…
――なるほど。お話を聞いていると今の婚活はマッチングアプリが多いのですね。
松尾 私のお客様の9割以上はマッチングアプリを使っています。結婚相談所も結構入っていて、マッチングアプリと併用しながらという方が多いですね。
――女性側の結婚に対するイメージ、価値観の変化は感じますか。
松尾 感じます。起業当初は結婚に対して「結婚すれば幸せになれる」って夢見がちな人が多かったんです。今は結婚後も現実的な生活が続くものだと考えている人が多い。
結婚後に共働きをするか、夫婦の金融資産をどうやって形成していくかなど、お金について結婚前から突っ込んで話し合う人とかもいます。だいぶ現実的になってきました。
最近の人は、離婚する時のリスクを考えてしまう
――松尾さんは現在、東京都で婚活の支援事業もしています。
松尾 いくつかコラムを提供させていただいたり、あと結婚後の生活を形成するためのライフデザインのコンテンツを動画で提供させてもらってます。
よく少子化が課題と言われてますが、合計特殊出生率はこの20~30年変わっていないんです。未婚の人たちが結婚すれば子供が生まれる確率が高まるので、本当は少子化対策よりも婚活支援をした方が、生まれる子供の数は理論上は増えるんじゃないかなと思っています。
――どうやったら婚姻数は増えると思いますか。
松尾 先日、美容院に行ったら、男性の美容師の方が「正直、年収のある男からすると結婚ってうま味がない。リスクなんですよ」と話してました。今はみなさん、離婚する時のリスクを考えるからです。
離婚をすると財産分与が起きますよね。男の人からすると財産を半分持っていかれると思うと、今の結婚制度に魅力を感じないそうなんです。
フランスでは離婚の時に権利問題が大変だからと、最初から結婚ではなくて、「PACS」というパートナーシップ的な制度を選択する人が増えています。若い人たちほど、単に結婚すれば幸せになるとは思っていない。だから結婚して失敗した場合のリスクを軽減してあげたらいいんじゃないでしょうか。
写真=石川啓次/文藝春秋

INFORMATION
松尾 知枝(まつお・ちえ)
1980年生まれ。東京都出身。10歳から8年間、児童養護施設で暮らす。施設出身者の大学進学率がわずか10%という状況ながら大学進学を果たし、大手日系航空会社にCAとして乗務。最新著書「あなたの生きづらさ“昭和な呪い”のせいでした」(小学館)。
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