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──義眼を入れる選択肢はあったのでしょうか。
北條 義眼を入れるにはそれを支える骨が必要なんですけど、私は小児がん治療のせいでその部分の骨がなく、まぶたが萎縮しているんです。
盲学校の高等部のとき、主治医に相談してみたんですよ。でも「義眼を入れるなら耳の後ろの軟骨と足裏の皮膚を移植しないといけない。大きな手術だし骨に関わるから、やるなら成人後のほうがいい」と言われました。
義眼は「年間100万円くらいかかるな、ならば…」
──骨格などが固まるまでは難しいと。
北條 そうなんです。それに手術後はひと月ほど入院が必要だし、皮膚の移植は最高2回までしかできないと言われました。
あと、義眼は消耗品なので(※厚労省が定めた義眼の耐用年数は2年)、入れてからのメンテナンス費が結構かかるんです。補助金が出るケースもありますが、私の場合は試算すると年間100万円くらいかかるな……と。手術後のことも考えると、義眼はなくてもいいかなと思うようになりました。
──高校生でそれを納得するのは難しそうです。
北條 両目がある人に比べて、見た目のハンディを背負っているという思いはありますね。そのことを強く感じたのが、障害者職業能力開発校で聞いた就活セミナーでした。
──盲学校卒業後は就職しようと?
北條 盲学校の高3で進路を選ぶとき、私は「1秒でも早く親元から離れたい」と思っていたんです。当時は親が別居して家族がバラバラに暮らしていて、私は両親の板挟み状態で。