育児を放棄し、実家から飛び出した
検察官が読み上げた女性の両親の供述内容をかいつまむと、こうなる。
兄と妹、祖父母、曽祖母との大家族で父は農業、母はパート従事。小さいときは活発で駆け回って遊ぶ子どもだった。テストは8割ぐらいとれていた。だが、ものを片づけられず、両親は厳しく叱責している。
寮生活となった高校で異性問題を起こす。携帯電話代が2万~3万円となる。親に迎えにくるよう頼んでも時間を守ることができなかった。介護分野の専門学校の卒業前には約80万円の学費を使い込んだ。介護の仕事につくと家に帰ってこなくなる。この頃、性風俗のダブルワークを始める。のちに、予期せぬ妊娠をしていることを周辺から知った父親が説得し、出産のために実家に連れ戻す。
第1子を出産後、3カ月で介護職に復帰。子育てを両親に任せっぱなしになり、叱責されて家出。第2子の妊娠を機に結婚して夫とこどもとともに実家で暮らしたが、夫と1年で別れ、前後して100万円の借金が発覚。第2子は元夫が引き取り、第1子に対して育児放棄。溜まりかねた父が子育てをしないなら家を出ていけと言うと、本当に出て行った。
高松にある風俗街・八重垣新地のヘルス店の寮に住み込み、ヘルスの仕事を始めたのはこの後である。
親にとっては「だらしのない娘」だが…
親の証言から浮かび上がる娘の姿は、お金の管理ができず、生活を整えられない、そして異性問題を頻繁に起こし、わが子を育てる意思のない、だらしのない無責任な人物像だ。
ところが、興野氏は「片付けが苦手」「金銭管理が苦手」「衝動的に買い物をする」「性的衝動が強い」「叱られると黙り込む」「(買い物、特定の人間関係、セックスなどの)依存」「(妊娠時に)相談ができない」といった行動にこそ、ADHDの特性が現れていると説明した。
【興野】性格と神経発達症の違いは極めてわかりにくいものです。そもそも、ADHDだからといって悪いことばかりがあるわけではありません。興味のあるものにはものすごい集中力を発揮して困難を突破して新しいものを世の中に打ち出していく能力があるのも、こういう人たちです。