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だが、孤立出産殺害遺棄事件の裁判では、「なぜ孤立出産したのか」「なぜ相談しなかったのか」「なぜ母親なのに殺したのか」、飽くことなくゼロからの尋問が繰り返される。今回も病理性のメカニズムが理解された法廷だっただろうか。
裁判を振り返って、蓮田氏はこう語った。
「私たち医療従事者は目の前に起きた事象をエビデンスに基づいて分析します。産婦人科医として孤立出産の症例を数多く見た医師の立場からすると、女性が孤立出産し、殺害遺棄するという事態には、医学的根拠がある。
赤ちゃんポストに訪れた女性たちや内密出産の女性たちは、孤立出産殺害遺棄の人たちと紙一重の状況下で生きている人たちです。彼女たちを分析した結果、私たちが行き着いた結論は境界知能や神経発達症といった脳の問題、そして家族関係です。
3年間、裁判に関わってきましたが、裁判官はこの異常事態をありのままに見ようとしていません。『母親なら赤ちゃんを育てるはず』『母親なのになぜ殺したのか』という問いは、母親はそんなことをするはずがない、という思い込みによる、合理性に欠けた質問です。
彼女たちがたった1人で危険な出産をして殺害し、さらに遺体と寝起きするような非常識な状況には、医学的に明らかにできる事実があると私は確信していますし、それを今後も引き続き証明していくつもりです」
三宅 玲子(みやけ・れいこ)
ノンフィクションライター
熊本県生まれ。「ひとと世の中」をテーマに取材。2024年3月、北海道から九州まで11の独立書店の物語『本屋のない人生なんて』(光文社)を出版。他に『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文芸春秋)。
ノンフィクションライター
熊本県生まれ。「ひとと世の中」をテーマに取材。2024年3月、北海道から九州まで11の独立書店の物語『本屋のない人生なんて』(光文社)を出版。他に『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文芸春秋)。
