松永 1番の成功例は、弊社で一緒に働いている宮川英二です。彼は「ボーイフレンド」というお笑いコンビを組んでいたのですが、今は転職希望者の面接対策をしたり、就活生と企業を結び付けるマッチングイベントの司会をしたりしています。元芸人なので、喋り方や場の回し方が上手いですね。

「芸能界の闇」を晴らすために

――これからの芸能界には、どんなことが必要だと思いますか?

松永 これからの時代は、芸能人が真っ当な仕事として成り立つようにしなければならないと思います。そのためにはまず、芸能事務所が月に1回は所属タレントに近況をヒアリングすることが必要だと思います。僕がホリプロにいた時は上の方がよく食事に連れて行ってくれて、家族のように話を聞いてくださったので安心することができました。そういう関係性が築けていない事務所もあると聞きます。

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 また、国がアクションを起こすことも大切だと思います。2024年6月には、国会議員や関係省庁の方々に芸能従事者の実態と課題について話をしに行ってきました。「一般社団法人日本芸能従事者協会」代表理事の森崎めぐみさんと一緒に、芸能人の仕事内容、セクハラ、パワハラ、出演料のことを含めて現状を訴えました。芸能界の闇は本当に深いですが、少しずつ国が動くようになってきていると思います。

 一案ですが、例えば芸能人を“免許制”にするのはどうかと思います。一定の人数だけ免許を出して、定年制度を設けて退職金がもらえるようなシステムを作るんです。そうしないと人数が多すぎて、仕事として成り立たないと思います。「そんなのは絶対に無理だ」と言われますが、何らかの仕組みを作らなければ芸能界は変わりません。

 芸能界は生活を補償するような部分がまるで整備されていないので、そうした「仕組み」のようなものが必要じゃないでしょうか。

「真剣に芸能界を生きてきた人に次のステージでも活躍してほしい」 ©橋本篤/文藝春秋

――芸能人のセカンドキャリア支援について、どんな人に知ってもらいたいですか?

松永 アイドルとして頑張ってきた方や、僕のように50歳くらいまで役者をやってきた方など、真剣にやってきた人に知ってほしいです。特に50歳くらいになると「次の仕事に移るのは難しい」と感じると思いますが、今はそういう方のキャリアがクローズアップされ、「うちの会社で生かしてほしい」と仰る企業が増えています。

 思ってもみない形で、楽しい仕事が待っているかもしれません。「芸能人って他の仕事もちゃんとできるんだ」と伝えていくことを含めて、1つの時代を築いた方に次のステージで活躍してほしいですね。

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