最終週「イカ天キング」を決めた意外な曲に、審査員は頭を抱え…
――メンバー全員、アンダーグラウンド的というか演劇的というか、はっきりした方向性やキャラクターがありましたね。戦略みたいなものはあったんでしょうか?
石川 「イカ天」の審査はガチだし、どうやって勝とうか、なんて考えてなくて。僕らはあえて「自分たちらしい、どアングラな曲を!」ってことで初回に『らんちう』を演奏したんだけど、まさかで、それが評価されて。2週目には「じゃあちょっと違うのをやろうか」って『さよなら人類』を。だから1週目に勝ち抜かなかったら『さよなら人類』っていう曲が世の中に知られることはなかったんです。
――1週目には、知久さんが作った今もソロで歌っている『らんちう』。2週目は代表曲として知られている『さよなら人類』。そうして勝ち抜き続けた最後の5週目に、まさかの『まちあわせ』というコーラス曲をチョイス。
石川 5週目は勝っても負けても「イカ天」に出るのが最後だったから、それなら観てる人にギャフンと言ってもらいたくて。バンド合戦なのにギター1本で、あとは全員がコーラスっていう形でね。
――あのパフォーマンスは、審査員が頭を抱えるほど衝撃でした。
石川 そのとき対決したのが、マルコシアスバンプってすごい実力あるバンドだったから。普通だったらみんなそっちに票を入れると思うんだけど、そのとき特別審査員だった映画監督の大島渚さんが、たまたま一番最初に「このパフォーマンスは深くてすごい」みたいなコメントをしちゃったものだから、他の審査員も「あれ? これは滅多なこと言えないのでは……」みたいな空気になり、「審査員が審査される」って雰囲気になっちゃって(笑)。だからあのとき、大島渚監督が一番最初にコメントしなかったら、5週目の結果は変わっていたんじゃないかな。
結成から19年で「たま」が解散したワケ
――勝ちにいくより「ギャフン」を取ったわけですね、最後の出演回に。そんなふうに演奏する曲を選んでいたんですね。
石川 でも「イカ天」の演奏時間は3分って決まっていたから、後半が盛り上がる長尺の曲ができなかったし、なるべくみんなに見せ場がある曲にしようかって感じで選んでいたね。
――確かに、演奏時間3分とか「イカ天」にはいろいろルールありましたね。36年経つとちょっとうろ覚えです。
石川 演奏の映像はYouTubeに上がってたりするけど、番組のルールや細かいところは昔の視聴者もわからなくなってるかもね。でも、それもこれもみんな『「たま」という船に乗っていた』を読めばわかりますよ!(笑)
――「たま」は2003年に解散したんですね。
石川 そう。4人編成から3人編成の「3たま」になって、それも解散して。以来、22年経ちますね。
――「たま」は20年近く活動していた。
石川 19年ですね。ピーターパンだったんで「20歳の大人になる前に解散しよう」って(笑)。
――やり切ったという感じも?
石川 というか、ソロ活動や並行してやっていた他のバンドが忙しくなっちゃって。「たま」が解散した3日後にぼくと知久くんは「パスカルズ」(14人編成のアコースティック・オーケストラで石川さん、知久さんも参加)っていうバンドのヨーロッパツアーに向かったりしてね。