ヨーロッパでカレッジ・チャート入りした「パスカルズ」の大躍進

――「パスカルズ」と「たま」は活動時期が重なっていたんですね。現在も活躍が続く「パスカルズ」は日本のみならず、海外でも人気がありますね。

石川 ヨーロッパの方がお客さんが入りますね。インスト中心でユーモアがあるバンドってありそうでないし、クスクス笑いが起こりながら盛り上がる、エスプリがきいてる感じなんかがウケてるようで。

――「パスカルズ」はもともと海外向けのバンドだったんですか?

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石川 そんなことはなくて、パスカル・コムラードっていうフランスの音楽家の曲のカバーをやろうってことで、日本で活動を始めたんだけど。そのパスカルさんが来日したときにデモテープを渡したら、本人がすごく気に入ってくれて、向こうのレコード会社に売り込んでくれたんです。それで向こうでデビューすることになって……よくわからないけどカレッジ・チャートで1位になったとかで、それでフェスなんかに呼ばれるようになったんです。

パスカルズのアルバム『日々、としつき』。パスカルズは、ドラマ『妻、小学生になる。』『凪のお暇』映画『さかなのこ』などのサントラも手がけている

――すごいですね、シンデレラじゃないですけど。

石川 人生何が起こるかわからないよね。

「ゾウのお尻は洗いたくない〜」と名誉なスカウトをお断り

――そういえば石川さんは「パスカルズ」のツアー中に海外でシルク・ドゥ・ソレイユにスカウトされたことがあるとか。

石川 あったあった。僕は「パスカルズ」でガラクタパーカッションを担当してるんですけど、あるとき、わざとシンバルだけ3~4メートル高い位置にセットして、真剣にジャンプしないと叩けないっていう、パフォーマンス的な演奏をしたんです。そしたらそれが大ウケして。それで演奏が終わってから、ダーッと走ってくる人がいて、「シルク・ドゥ・ソレイユだけど、サーカスに入らない?」って言われた。

©︎文藝春秋

 だけどそのとき僕シルク・ドゥ・ソレイユなんて知らなかったし、もう40歳くらいになっていたから「いまさらサーカス団に売られて、ゾウのお尻とか洗う仕事させられても嫌だな~」と思って、連絡しなかった(笑)。のちのち、引退したオリンピアンとかも入りたがるような、すごいところなんだって知りました。

――名誉ですけど、シルク・ドゥ・ソレイユなんて、入ったらなかなか大変そうですよね。

石川 本当だよね。僕は「パスカルズ」でも、すごく自由にさせてもらってて、リハーサルにも呼ばれないくらい。バンマスのロケット・マツさんが「浩司は即興で音に反応してくれた方が面白いから、曲なんて知らなくていいよ」って(笑)。歌詞のある歌モノのリハくらいは呼ばれるんだけど。

――「パスカルズ」は緻密な音作りもする一方で、そんなことも?

石川 楽譜と睨めっこで音を揃えなきゃいけないバイオリン隊もいるし、人数も楽器の種類も多いからいろいろ考えて音作りされてるバンドなんだけど、一方で僕は……だから新曲は、お客さんはもちろん初めて聴くんだけど、僕も初めて聴くなんておかしなこともあったりします!(笑)

撮影:石川啓次
取材協力:レストラン多花美

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