原田さんの帯が違う層の背中を後押し

昼間 その前から息長く売れていたのが、このタイミングでバッと来た。年齢層としては中高年の女性がメインだと思いますが、これだけの数売れると、もはや男女問わず幅広い年代が買っていると思うんです。私みたいにリアルタイムの読者世代じゃなくても。原田さんの帯がまた、今までとは違う層の背中を押してくれたような気がします。

高頭 原田さんが『三千円の使いかた』の著者であることが分かる帯で、この本は広い世代に売れたから、同じような期待をして買ってくださるのかもしれません。

各書店でも大きく展開されている。(ジュンク堂書店三宮店)

 丸善では、まず日本橋店で売れていました。近くにデパートがあるので、年齢層的には高齢の女性が多いからピッタリ。丸の内本店でも『おはよう日本』で一気にドカーンと来ました。いくらなんでも、これだけあれば大丈夫だろうという3桁の部数があったのに、2~3日ではけてしまいました。丸の内本店は立地的にどちらかというと男性客が多いにもかかわらずです。

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『青い壺』再燃の理由とは?

内藤 約半世紀前に出た『青い壺』が、なぜ今人気が出たと思いますか?

高頭 40年ぶりに読んでみて、やはり昭和の情景がすごく浮かんでくる。一方で、変わらない人間の心が描かれている。

平井 今私たちが読んでも昭和を感じることができるのが一つ。さらに、Z世代とか若い子に昭和リバイバル、昭和がかっこいいという潮流があります。団地をリノベーションして住んだりしているという話も聞くので、その世代に刺さるのかなと思います。私は第一話にある、縁側で玉露を夫婦で飲む場面が大好きです。昔の祖父との思い出が、ワーッとよみがえってきました。

子供用の駄菓子を盆にのせて、明るい日射しを浴びた縁側で、夫婦は緑茶を啜った。/「ええ茶ァやな」/「その筈やし、玉露やもん」/「おいおい、玉露をふだんに使うてるんか」/「吝なこと言いな、お父ちゃん。あんな上等の壺が上ったときぐらい、贅沢なお茶飲みましょうな」(第一話)