「カルト集団と錯覚するような結びつきの強さ」総会で感じた管理組合の“異常さ”
この管理組合はおかしい——。手島の疑惑が確信に変わったのは、理事たちが理事長を擁護する必死な姿を目のあたりにした時だった。
「収まりがつかない住民に対して、『あなたたちは理事長がどれだけ働いているか分からないのか』と監事が大声を出したのです。その様子が本当に恐怖でした。理事長を心の底から崇拝(すうはい)し、陶酔しているようにしか映らなかった。カルト集団と錯覚するような異常な結びつきの強さでした」
手島をさらに驚愕させたのは、管理費の値上げについて決を取る際の言動だった。
「理事の一人が委任状を見せびらかして、『私どもは、このマンションにとって一番最適なことをやっているんです』と」
圧倒された手島は、何度も腕時計に目を向けた。2時間の予定の総会は、3時間を超えている。ようやく総会が幕を閉じると、深いため息をついた。
「なんだこの総会は。北朝鮮かよ」
理事たちが退席するすんでのところで、住民からはこんな罵声(ばせい)が飛んだ。
明るみに出た理事たちの横暴と数々の謎ルール
会場内には余韻(よいん)がまだ残っていた。少なくとも、一部の住民たちにとっては、とても納得がいく総会ではなかったからだ。心に残ったモヤモヤは誰しもが感じていた。心なしか、帰路につく足取りも重い。
そんな中、投資目的で秀和幡ヶ谷レジデンスを購入したある男性オーナーが、沈黙を破った。
「このままでは帰れませんよね。よければみなさんで情報共有しませんか」
一人、また一人とこの提案に応じる者が出てきた。手島も、佐藤も考える間もなく、首を縦に振った。桜井も同じだった。この日、8名の参加者が会場からほど近い大手珈琲チェーン店で顔を合わせることになる。
参加者の面々は、大半が初めて総会に参加する者だった。
「いつも総会はあんな様子なのか」
「理事たちの人となりはどんなものか」
「こんな形で値上げが決まるのはおかしい」
議論は次第に熱を帯びていく。手島や佐藤のように初参加の面々が、桜井のような常連組に質問を投げかけていく時間が続いた。その中で理事たちの横暴は、決して総会だけではなかったことを知る。手島が振り返る。
「総会の振り返りから始まり、時間が経つ頃には住民がどんな不利益を被っているのかという話題になった。そこで、数々の謎ルールが明らかになっていった。桜井さんたちの口から、どんどん常軌を逸した決まり事が出てくるのです」
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