ベトナム人女性が技能実習生や留学生の立場で日本に出稼ぎに行く場合、出国前にさまざまな名目で60~100万円程度の費用がかかる(2022年時点。近年はやや安価)。だが、お見合いサービス経由の結婚ならば金銭的な負担はゼロだ。業者に手数料を払い、女性の来日費用ほか諸費用を負担するのは、基本的に相手側の日本人男性だからである。「自分が嫁ぐ」ことの心理的なハードルは高いものの、技術や語学力がない人でも元手がゼロで日本に出稼ぎ(どころか永住)できるメリットは大きい。

 もっとも、ビザ目的の結婚は怪しい世界である。

絶世の美女や巨乳の女性の写真がスマホに大量に送られてきた

 それは、日本人男性の私がベトナム系の結婚エージェントに連絡しただけでも体感できた。「この女性と結婚できます」と、絶世の美女や巨乳の女性の写真がスマホに大量に送られてきたからだ。

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 いっぽう、日本人との結婚を望むベトナム人女性にも、やはり「夢」が示される。

 たとえばこちらは、通訳のホアがフェイスブックの国際結婚グループから探してきた、結婚エージェントがベトナム人女性向けに出している「日本側の男性求婚者」のプロフィールだ。

・青森県、41歳、169センチ、53キロ、初婚、大卒、会社員、年収1600万円
・愛知県、36歳、172センチ、76キロ、初婚、院卒、会社役員、年収1025万円

 いずれも、顔にはボカシがかかっているものの、スーツ姿のスマートな男性の写真付きである。

©optimusイメージマート

 しかし、日本国内の婚活市場でも引く手あまたの若いハイスペック男性が、成婚に多額の費用が必要な国際結婚業者に登録して、出稼ぎ目的のベトナム人女性と結婚することは考えにくい。

 そもそも、スマートな外見かつ年収1600万円で婚活中の男性会社員(青森県在住)は、現実的に存在し得るのか。日本社会についての常識がすこしでもあれば、投稿に“騙し”があることは容易に想像できる。

 美女とカネとウソ。ベトナムの国際結婚市場は、男女双方の幻想で支えられている。