継母から日常的になじられ、実の父親からレイプされ、地獄のような思春期を過ごしたという滝川沙織さん(53歳・仮名)。その娘である滝川夢さん(19歳・仮名)も、深い心の傷を抱えて不安定な母との関係に悩み苦しんでいる。

 ここでは、ノンフィクション『母と娘。それでも生きることにした』(集英社インターナショナル)より一部を抜粋して紹介。夢さんは、共に暮らすうちに母の中に「何人かの人格がいる」と気づいたという。別人格になってしまった沙織さんの驚くべき行動について語ってくれた。(全4回の4回目/最初から読む)

写真はイメージ ©AFLO

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激昂の雄叫び

 ママは二重人格なのかと、思うことがあります。

 今、ママとすっごーく楽しく話してるなーと思えて、楽しい気持ちのまま寝ようと、部屋に戻るから電気を消した瞬間、「なんで、消すのー!」って、突然、怒鳴り始めるんです。

「ごめん、ごめん、たまたま消えちゃったから、明るくするねー」

 そう言って謝っても、そこからずっと怒り続けるばかり。もう、何か、一瞬でスイッチが切り替わったみたいな感じで、前後に何の脈絡もないので、呆気に取られるしかないのです。

 ついこの前も、私、(夢さんのボーイフレンドの)蒼くんがすごく優しいという話をしたんですが、ママが「パパに似ている」って言ってくるものだから、私、めっちゃ素早く、滑り込むように、「一緒にしないで」って言ったんです。そもそも、人と一緒にされたくないし、その人にしかないものがあるから。

 その時はママがキッチンにいて、私が対面でリビングにいたのですが、もう、瞬間です。ママが持っていたパン粉のケースをガンと思いっきり、下に叩きつけるように投げつけたんです。

 そして、激昂の雄叫びが飛んできました。

「一緒にしないでって、何! 私が今まで、育ててきてあげたのに!」

 もう、いつスイッチが入るかわからない。「一緒にしないで」で入るなら、どこで入るかわかりません。(弟の)海くんもよく、「物に当たらないでください」って、注意しています。