マイナスになるかもしれない爆弾
怒りのスイッチが入ったら、怒りの感情しか出てこない。だから、「ごめん、言いすぎた」なんてことにはならなくて、ずーっと怒っているのです。
初めに、「悲しい」というスイッチが入ったとします。そこから、「怒り」のスイッチに切り替わったなら、「悲しい」という感情は、ママから全部、消えます。怒りのスイッチがオンになったら、悲しいスイッチはなくなります。スイッチは1個しか、オンにできないんです。怒りしかないので、ものすごく激しくぶつかってきます。そうなると、こちらの態度を変えても全く意味がないわけです。
昔は怖い人のママに怯えるだけでしたが、最近はこういう時、強い言葉をぶつけるようにしています。そうすると、泣き虫の子どもが出てきて、こうなると扱いやすくなることを、さすがに私も会得しました。
「もう寝な。疲れているんだし、お茶でも飲んで、寝な」
こうやって駄々っ子をあやすと、素直に寝ます。だけど、毎日、気分のわからない人間の相手をしなくちゃいけないのが、本当に面倒くさいわけです。
蒼くんは、お母さんを数年前にがんで亡くしているから、「生きているだけ、いいじゃん」っていつも言うんだけど、私は「そうは思わない」……とは口が裂けても言えなくて……。いなかったらいいなーって。自分でも、ママでも。自分がいない世界でもいいし、ママがいない世界でもいい。その方が、ラクそうだから。
私、日頃から「プラス」を求めないようにしています。「いいことがあったらいいな」程度に留めていて、「いいことがありますように」とは思っていなくて、マイナスにさえ、ならなければいいなと思って生きています。
ママとの生活は、「マイナスになるかもしれない爆弾」を常に持っていないといけないので、バイトが終わっても、「ああ、これから家に帰って、マイナスだったら、爆発するかも」って暗い気持ちに襲われます。爆発するギリギリまでバイトしないといけないって、自分で決めています。だから、帰るのは終電近くになっちゃうんです。ギリギリまでバイトしないといけないのが、めちゃくちゃ、しんどいです。プラマイゼロなら、全然、いいんです。
私、「マイナスになるかもしれない爆弾」と「プラスになるかもしれない爆弾」を、常に持っているんです。さおちゃんの感情が、ぴたっと止まった時に、マイナスになるかもしれない、プラスになるかもしれないって、ずっと思っていて、どっちだろ、どっちだろっていうのを、ずっとやってきているんです。それがもう、しんどいです。
だって、ずっと慎重に、その爆弾を持っていないといけなくて……。いつから、爆弾を持っていたのかと言えば、それはもう、小さい頃から持っていました。どこかで、きっと覚えたんだと思います。
