我流でやろうとしても「型無し」でしかない
――素朴に聞いてしまうのですが、本を楽しく読むことと、自分が書きたいということの間には、大きな差があるように感じますが。
城戸川:私自身本を読むのが好きというのと、話をするのが好きというのがありまして。
高校時代、フェンシング部の恩師がたいへんスパルタな方で。大会の遠征に行く車の助手席で、部長が面白い話をし続けなければといけないという伝統があり、その中で「話の尺が長い」「山場が小さい」「助走が長すぎる」という指摘を受け続けた結果、物語の構成力が鍛えられました(笑)。
自分が考えた話を面白く話すことで笑ってもらえる、楽しんでもらえるのが好きだったというのと、小説を読むのが好きというのが繋がりました。
――ご興味あるか分からないですが、ラジオDJとか向いていると思いますよ(笑)。ご出身は…。
城戸川:山形です。関西ではないです(笑)
――商社に入ってすぐ書き始めたんですか?
城戸川:それはもう想像以上の大変な日々で。面白くもあり、スリリングでもあり、シンプルにキツイ日々が始まりました。小説を書くなんてスポンと抜けますよね。
――いつのタイミングで書こうと思ったんですか?
城戸川:会社員2年目の終わりのころですね。自分がこれはできたなと思うこともあれば、学生時代に思い描いていた活躍ができず、理想と現実のギャップに悩んだ時期もありました。「俺の人生これでいいんだっけ」と考えていた時、小説を書きたいと思っていたことが、ふと頭をよぎりました。
――そこからは?
城戸川:小学校・中学校では剣道を、高校・大学ではフェンシングをするなかで、「型を大事にする」スポーツだと感じていました。
やはり基礎を大事にするのが一番の近道だと思っているので、型が身に付く前に我流でやろうとしても「型無し」でしかない。「型破り」をするには、まずは型を身に付けようと小説教室に通い始めました。
――いつ執筆されているのですか?
城戸川:まず土日は全部。そして平日は昼休みが始まったら、コンビニのおにぎりと私用のPCを持って会社の近くの公園へ行きます。2、3分でごはんを食べたら、残りの45分間ずっと小説を書いて、終わった後何食わぬ顔で自分のデスクに戻るというのを一時期はやっていました(笑)。
――燃料補給だけ(笑)。
城戸川:もう本当に10秒チャージでした(笑)。




