”現役商社マン作家”ができあがるまで
――ここからは城戸川さんのキャリアについて。
商社に勤めながら小説を書くというのは一体どういうことなのか、伺っていきたいと思います。学生時代はどんな学生でしたか?
城戸川:学生時代はフェンシング部の主将を務めながら、アカペラサークルにも所属していました。当時、小説を読むのは好きだったのですが、小説家になりたいと思ったのは学生時代の最後の最後、でした。
――本は、ずっと読まれてきたんですよね。
城戸川:小学校中学年のころに『ハリー・ポッター』が発売されて、『ダレン・シャン』『エラゴン』『バーティミアス』といった、めちゃくちゃ分厚い海外ファンタジーにハマりました。
その一方で、青い鳥文庫の『パスワード探偵団』(松原秀行著)シリーズ、『名探偵夢水清志郎事件ノート』(はやみねかおる著)シリーズなど、児童書のミステリものを読み漁っていたのが幼少期のころですね。
――ずっとストーリーを読まれてきた。小説家の道に進まず、なぜ商社に?
城戸川:就活で自己分析をするなかで、自分が何をしてる時が一番楽しいか考えた結果、主将や部長をしている時が楽しかったということに行き着きました。
主将や部長の役割は、ある組織のなかである目標を立てて、その中にいるみんなが同じ方向を向くように声をかけ、その目標に向かって、自分自身も手足を動かして誰よりも努力をする、ということだと当時は考えていて。そのイメージに一番ぴったり来たのが、商社でした。
国内、国外の人たちと協力しながら目標を達成して、さらなる野望に向かって突き進んでいく。おそらく違う業界でも同じような働き方はできると思いますが、就職活動しているときの自分は、商社が最も近いと思って第一志望にしていました。
――主将や部長の話はリーダーシップや巻き込み力とも言えそうですね。それでは商社に入ったのち、作家を目指そうと思ったのはどういうきっかけだったのですか。
城戸川:大学4年生の卒業間近に、(面識はないものの)同級生の辻堂ゆめさんが「このミステリーがすごい!大賞」で入選されました。そしてその年度の東京大学の総長賞を獲ったのを見て、衝撃を受けました。
自分は昔から本が好きだったのに、なんで自分で書こうとトライしなかったのか、恥ずかしいとか情けないという気持ちになりました。これが、小説を書くということを初めて意識した瞬間でした。




