小田急が花嫁に持たせた“嫁入り道具”

 鉄道会社にはそれぞれ異なる仕様がある。「軌間と電圧が同じならそのまま走る」とはいかない。そこで花嫁には他にも「西武家」の作法が与えられた。

 保安装置の列車自動停止装置(ATS)はその一つだ。同様に列車無線機器、地上機器と車両機器の情報伝送装置も取り替えた。床下機器では蓄電池も増設。これは小田急と西武の規定の違いだ。電源を供給しない場合、車内機器を維持するために蓄電池を搭載している。小田急は30分維持できる蓄電池を搭載しており、西武鉄道は60分維持する規定になっているそうだ。

保安装置は西武鉄道仕様に交換(筆者撮影)
蓄電池カバーは小田急の廃車部品を移設。使いこなした色だが中身は新しいという(筆者撮影)

 増設した蓄電池ボックスは新品ではなく、小田急が廃車した8000形からの流用だ。このほか、改造元になった車両で傷みがあった機器については、廃車した8000形から程度の良いものを流用しているという。これは小田急側の作業だったとのこと。繰り出す側も、しっかり“嫁入り道具”を調えたわけだ。

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 ちなみに、連結器部分もスッキリしている。小田急電鉄で使っていた電気連結器を取り外したからだ。電気連結器は編成同士を連結したときに、電気信号などの配線を接続するために使用する。小田急電鉄では小田原方面と江ノ島方面の電車を連結するために使っていたけれども、西武鉄道で導入予定の国分寺線では編成の連結や解結は行わないため、外した。

パンタグラフの摺り板も新品に交換済み(筆者撮影)