西武の要求を小田急・東急が快諾したワケ

 これは西武鉄道が掲げる「グループ全体でのCO2排出量を2030年度までに2018年度比で46%削減、再生可能エネルギー導入率を2030年度までに50%とする」という目標にも合致する。支線向け新型車両を少しずつ投入するよりも、他社で引退するVVVFインバータ電車を大量に調達したほうが目標を達成しやすい。何より、電車の製造時に使うエネルギーで大量のCO2を発生させることも看過できない。

 こうして西武鉄道の中古車両探しが始まったわけだが、なかなか大変な作業だったようだ。自動車なら中古車情報誌があるけれど、鉄道業界にそんな便利な手段はない。「おたく、電車が余っていませんか……」と門を叩くような取り組みが始まった。

 幸いなことに、小田急電鉄と東急電鉄が西武鉄道の主旨に賛同し、新車と入れ替えに発生する余剰車両を譲渡してくれることになった。小田急はグループ全体で2050年までにCO2排出量の実質ゼロを目指し、東急グループも2030年までにCO2排出量を46.2%削減し、再生可能エネルギー率50%を目指している。小田急電鉄、東急電鉄ともにさらなる省エネ車両の導入を進める一方で、引退車両の処遇に困っていたと思われる。大柄な20メートル級車体は中小私鉄に譲渡しにくく、解体するしかなかった。それを西武鉄道が引き取ってくれるのだ。

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 西武鉄道は程度の良い省エネ車両を得られ、沿線の人々も新しい車両に乗れて、小田急と東急は車両を捨てずに済んだ。三方良しである。小田急沿線にお住まいの方も、西武鉄道の国分寺線に乗りに行って懐かしさを楽しんでみてはいかがだろうか。東急沿線育ちの私は、東急の9000系電車がどんな「西武鉄道色」に染め上がるか、今から楽しみだ。