『片思い世界』で主人公になる3人の若い女性の共通点

『片思い世界』の主人公となるのは、22歳の相楽美咲(広瀬すず/太田結乃)、21歳の片石優花(杉咲花/吉田帆乃華)、20歳の阿澄さくら(清原果耶/石塚七菜子)という、3人の若い女性だ。3人は古い、しかし品格を感じさせる洋館に暮らし、それぞれ大学に通ったり、仕事やアルバイトをしていたりする。

©2025『片思い世界』製作委員会

 一緒に朝ご飯を食べ、身長を柱に刻む。バスで通勤し、帰宅後は何気ない恋バナに興じる。それぞれの誕生日にはサプライズ(劇中では鮮やかに失敗するが)パーティーを開き、バースデーケーキを食べる。ベッドの上では盛大にふざけ合い、盛大に笑い声をあげる。

 一見は満ち足りた生活に見えるが、しかし、違和感はその節々に生じる。彼女たちの道のりを見ると、バスはドアを開かず、同僚は挨拶を返さず、人のスマホを覗き込んでも、怒りを示されることもない。コンサートの舞台上で叫ぼうと、観客は誰ひとり反応することはない。

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 やがてその理由がわかる。彼女たちはいわば「死後の世界」の人間であるのだ。およそ12年前にともに命を落としてからは、生者の世界に密接した、しかし生者に触れることはできない、3人だけの世界で生活しているのだ。